2020/02/04

岡和田晃編著『現代北海道文学論—来るべき「惑星思考」に向けて』(藤田印刷エクセレントブックス)刊行!巽先生「平石貴樹―漂泊者が見た「日本の夢」と限界」ご寄稿です!

岡和田晃編著による『現代北海道文学論——来るべき「惑星思考」に向けて』が藤田印刷エクセレントブックスより絶賛刊行中です!

仮に、日本近代文学において東京という「中央」があるならば、本書『現代北海道文学論』は北海道という「周縁」から、二一世紀的な「現在」を鮮やかに照射してみせます。◆◆◆「北海道文学について考えることで、二一世紀的な「現在」を把握する新たな視座を獲得すること。すなわち、読者の世界認識を刷新するものとして、風土性を再考することこそを目指している」(岡和田晃「はじめに」より)◆◆◆

本書は三部構成(+補遺)。その理論基盤としての「惑星思考」とそれに基づく「北の想像力」の可能性が「中央・世界・映像」へ拓かれ(第一部)、「世界文学としての北海道 SF・ミステリ・演劇」を通じて詳述されたのち(第二部)、第三部「叙述を突き詰め、風土を相対化—「先住民族の空間」へ」において、これまで見過ごされてきたであろう問題群—例えば「蝦夷」をめぐる日本古代史/「和人」とアイヌ民族の衝突の歴史(クナシリ・メナシの戦い)/アイヌ口承文学および戦後におけるアイヌ語剥奪の歴史、とその狭間でゆれる人々の存在—等々が浮き彫りにされていきます。補遺パート「「現代北海道文学論」補遺―2018〜19年の「北海道文学」」も必読です。

第二部「「世界文学」としての北海道 SF・ミステリ・演劇」所収の巽先生による「平石貴樹――漂泊者が見た「日本の夢」と限界」は、フォークナーおよびメルヴィル学者としての平石氏の文学、とりわけ作家デビュー作「虹のカマクーラ」における「漂泊者」の眼差しを照らし出すとともに、アメリカの夢と「日本の夢」とが奇妙に波よせあう瞬間——鯨と鰐が相まみえる波間——を浮かびあがらせます。

無論、これまで CPAでフィーチャーしてきた荒巻義雄文学をめぐる論考「荒巻義雄——夢を見つめ未知の世界へ脱出」(藤元登四郎)も第二部に収録されています!(※巽先生が編集委員の一人をつとめられた定本荒巻義雄メタSF全集全八巻(別巻含む)+『附録 荒巻義雄年譜1933〜2015』については下記関連リンクおよびこちらをご参照ください。)

なお、姉妹編にあたる『北の想像力 《北海道文学》と《北海道 SF》をめぐる思索の旅』(岡和田晃編;寿郎社、2014年)には、巽先生と小谷先生ご登壇のパネル「北海道 SF大全@第 51回日本 SF大会 Varicon 2012」を収録。本パネルは、編者岡和田氏が「《北海道 SF》宣言」として位置付ける記念的瞬間!(※CPA記事はこちら)是非この機会に、併せてご一読ください!



『現代北海道文学論
——来るべき「惑星思考」に向けて』
岡和田晃編著
四六判、212頁
藤田印刷エクセレントブックス
2019年 12月
1,800円+税

【目次】
はじめに
第一部 「北海道文学」を中央・世界・映像へつなぐ
  • 「惑星思考(プラネタリティ)」で風土性問い直す時/岡和田晃
  • 円城塔――事実から虚構へダイナミックな反転/渡邊利道
  • 山田航――平成歌人の感性の古層に潜む「昭和」/石和義之 
  • 池澤夏樹――始原を見つめる問題意識/宮野由梨香 
  • 桜木紫乃――「ごくふつう」の生 肯定する優しさ/渡邊利道 
  • 村上春樹――カタストロフの予感 寓意的に描く/倉数茂
  • 佐藤泰志――「光の粒」が見せる人の心の揺らぎ/忍澤勉 
  • 外岡秀俊――啄木短歌の言葉の質 考え抜き/田中里尚
  • 朝倉かすみ――故郷舞台に折り重なる過去と現在/渡邊利道 
  • 山中恒――小樽で見た戦争 自由の尊さ知る/松本寛大 
  • 桐野夏生――喪失の果て 剝き出しで生きていく/倉数茂
  • 桜庭一樹――孤立と漂流 流氷の海をめぐる想像力のせめぎ合い/横道仁志

第二部 「世界文学」としての北海道SF・ミステリ・演劇
  • 河﨑秋子――北海道文学の伝統とモダニズム交錯/岡和田晃 
  • 山下澄人――富良野と倉本聰 原点への返歌/東條慎生 
  • 今日泊亜蘭――アナキズム精神で語る反逆の風土/岡和田晃・藤元登四郎 
  • 荒巻義雄――夢を見つめ未知の世界へ脱出/藤元登四郎 
  • 『コア』――全国で存在感 SFファンジンの源流/三浦祐嗣 
  • 露伴と札幌農学校――人工現実の実験場/藤元直樹 
  • 佐々木譲――榎本武揚の夢 「共和国」の思想/忍澤勉 
  • 平石貴樹――漂泊者が見た「日本の夢」と限界/巽孝之 
  • 高城高――バブル崩壊直視 現代に問いかける/松本寛大 
  • 柄刀一――無意味な死に本格ミステリで抵抗/田中里尚 

第三部 叙述を突き詰め、風土を相対化——「先住民族の空間」へ
  • 渡辺一史――「北」の多面体的な肖像を再構成/高槻真樹 
  • 小笠原賢二――戦後の記憶呼び起こし時代に抵抗/石和義之 
  • 清水博子――生々しく風土を裏返す緻密な描写/田中里尚 
  • 「ろーとるれん」――「惑星思考」の先駆たる文学運動/岡和田晃 
  • 笠井清――プロレタリア詩人 「冬」への反抗/東條慎生 
  • 松尾真由美――恋愛詩越え紡がれる対話の言葉/石和義之 
  • 林美脉子――身体と風土拡張する宇宙論的サーガ/岡和田晃 
  • 柳瀬尚紀――地名で世界と結び合う翻訳の可能性/齋藤一 
  • アイヌ口承文学研究――「伝統的世界観」にもとづいて/丹菊逸治 
  • 樺太アイヌ、ウイルタ、ニヴフ――継承する「先住民族の空間」/丹菊逸治 
  • 「内なる植民地主義」超越し次の一歩を/岡和田晃 

連載「現代北海道文学論」を終えて/岡和田晃×川村湊
補遺「現代北海道文学論」補遺――2018〜19年の「北海道文学」 
  • 伊藤瑞彦『赤いオーロラの街で』(ハヤカワ文庫、2017年)――大規模停電の起きた世界、知床を舞台に生き方を問い直す/松本寛大
  • 馳星周『帰らずの海』(徳間書店、2014年)――時代に翻弄されながら生きる函館の人々/松本寛大 
  • 高城高『〈ミリオンカ〉の女』(寿郎社、2018年)――19世紀末のウラジオストク、裏町に生きる日本人元娼婦/松本寛大 
  • 八木圭一『北海道オーロラ町の事件簿』(宝島社文庫、2018年)――高齢化、過疎化の進む十勝で町おこしに取り組む若者たち/松本寛大 
  • 『デュラスのいた風景 笠井美希遺稿集』(七月堂、2018年)――植民地的な環境から女性性を引き離す/岡和田晃 
  • 須田茂『近現代アイヌ文学史論』(寿郎社、2018年)――黙殺された抵抗の文学を今に伝える/岡和田晃 
  • 麻生直子『端境の海』(思潮社、2018年)――植民地の「空隙」を埋める/岡和田晃 
  • 『骨踊り 向井豊昭小説選』(幻戯書房、2019年)――人種、時代、地域の隔絶を超える/河﨑秋子 
  • 天草季紅『ユーカラ邂逅』(新評論、2018年)――〈死〉を内包した北方性から/岡和田晃 
  • 「惑星思考」という民衆史――『凍てつく太陽』(幻冬舎)、『ゴールデンカムイ』(集英社)、『熱源』(文藝春秋)、『ミライミライ』(新潮社)/岡和田晃
あとがき
初出一覧
編・執筆者略歴 

【関連書籍】
岡和田晃編著『現代北海道文学論——来るべき「惑星思考(プラネタリティ)」に向けて』(藤田印刷エクセレントブックス、2019年)




荒巻義雄『もはや宇宙は迷宮の鏡のように』(彩流社、2017年)



荒巻義雄『神聖代 (定本荒巻義雄メタ SF全集 第 6巻)』(彩流社、2015年)

荒巻義雄『柔らかい時計 (定本荒巻義雄メタ SF全集 第 1巻)』(彩流社、2015年)



荒巻義雄『骸骨半島 花嫁他 (定本荒巻義雄メタ SF全集 別巻)』(彩流社、2015年)


Yoshio Aramaki /Translated by Baryon Tensor Posadas /Foreword by Takayuki Tatsumi, The Sacred Era: A Novel (U of Minnesota P, 2017) *amazon / 極東書店


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