本作は、1987年発表。前作『白き日旅立てば不死』の14年後を舞台に展開されます。精神病院を退院した主人公の白樹直哉は、再び「異界」へと移り、14年前、救出に失敗し、異界の王クレマンに未だ捕えられているソフィーを探し求めます。「森の国」を抜け「迷宮園」へと、異形/倒錯者たち、賭博の論理で溢れる異界に分け入ります。
解説には、新戸雅章氏による「荒巻SFの二面性と世界性」と、高山宏氏による「体現/体験されるマニエリスム」が掲載。後者では、本作をマニエリスム小説として位置付け、白樹直哉が建築家であり、精神科医・西田冴子とSF作家・遠藤照春がペアとして提示される重要性が、ご説明されます。
また、巻末には、前作『白き日旅立てば不死』の土台となった中篇「ある晴れた日のウィーンは森の中にたたずむ」と、荒巻邦夫名義の評論「エリートの文学SF——ディック「高い城の男」に関するノート」が収録。巽先生による英語序文は、本巻でもお読みいただけます。さらに、付録「月報 2」には、荒巻氏自身による解説「<マニエリスム+バロック>ロマン」と、立原透耶氏による「進撃する知の巨人」、ドゥニ・タヤンディエー氏による「SF日仏同盟」が寄せられています。
前作と合わせて、ぜひご一読ください!
『聖シュテファン寺院の鐘の音は (定本荒巻義雄メタSF全集 第 4巻)』
荒巻義雄
巽孝之、三浦祐嗣編
四六判、492ページ
彩流社
3,200円 + 税
2014年12月刊行
*彩流社による本書詳細
【目次】
異界へ(プロローグ)
第一部
探路者
狂復活
聖狂会
第二部
森の国
革命軍
独裁者
迷宮園
異界へ(エピローグ)
後書
主要参考文献
解説 荒巻SFの二面性と世界性 新戸雅章
解説 体現/体験されるマニエリスム 高山宏
ある晴れた日のウィーンは森の中にたたずむ
エリートの文学SF——ディック「高い城の男」に関するノート 荒巻邦夫(名義)
Introduction (Takayuki TATSUMI)
<付録 月報2>
<マニエリスム+バロック>ロマン 荒巻義雄
進撃する知の巨人 立原透耶(作家)
SF日仏同盟 ドゥニ・タヤンディエー(立命館大学准教授)
*なお、全集全体は下記のとおりです:
- 第1巻「柔らかい時計」(第7回配本)// 2015 年5月
- 第2巻「宇宙25 時」(第4回配本)// 2015 年2月
- 第3巻「白き日旅立てば不死」(第1回配本)// 既刊
- 第4巻「聖シュテファン寺院の鐘の音は」(第2回配本)// 今回
- 第5巻「時の葦舟」(第3回配本)// 2015 年1月
- 第6巻「神聖代」(第5回配本)// 2015 年3月
- 第7巻「カストロバルバ/ゴシック」(第6 回配本)// 2015 年4月
【関連リンク】
【関連書籍】
荒巻義雄『聖シュテファン寺院の鐘の音は (定本荒巻義雄メタSF全集 第 4巻)』(彩流社、2014年)
荒巻義雄『白き日旅立てば不死 (定本荒巻義雄メタSF全集 第 3巻)』(彩流社、2014年)
岡和田晃編『北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅』(寿郎社、2014年)
- 荒巻義雄メタSF全集第1回配本『白き日旅立てば不死(第3巻)』が彩流社より刊行!巻末に巽先生による "Introduction" 、付録に小谷先生による「冴子の中のクリステヴァ」が収録されています!(CPA: 2014/11/22)
- 彩流社による全集詳細
- 大著『北の想像力——《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅』(岡和田晃編、寿郎社)刊行!第51回日本SF大会Varicon 2012にて開催され、巽先生と小谷先生がご登壇されたパネル「北海道SF大全」再録!(CPA: 2014/06/01)
- 特別展「荒巻義雄の世界」開催記念パネルディスカッション「荒巻 SF の原点を語る」に巽先生、小谷先生ご登壇@北海道立文学館(CPA: 2014/01/21)
- 日本SF作家クラブ50周年記念・国際SFシンポジウム・キックオフ開催のお知らせ(CPA: 2012/06/20)
【関連書籍】
荒巻義雄『白き日旅立てば不死 (定本荒巻義雄メタSF全集 第 3巻)』(彩流社、2014年)
岡和田晃編『北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅』(寿郎社、2014年)