本書『よくわかるアメリカ文化史』(ミネルヴァ書房)は、全六部構成。「近代国家以前」(第一部)から「南北戦争以前/以後」(第二部/第三部)、そして「 20世紀」(第四部)をつらぬき、「戦争と環境」および「環太平洋的ヴィジョン」(第五部/第六部)へと「アメリカ文化」の歴史を辿ります。もちろん、どこから読み始めるかは読者の自由!全 22章より成る各章は、おおむね三つのセクションを持ち(※第 12&18章は四つ、第 15章「ポップカルチャー」は充実の 12セクション!)、各セクションは見開き二ページの読み切りタイプで大変簡便。かくして織り重ねられる複数の「物語」を通じて、その多面的かつ魅力的な有様が浮かびあがります。
また、豊富に収録された図像群および各章附録のコラム(一ページの読み切りタイプ!)は、「一つのトピック」「一つの事物」「一つの作品」を出発点に、ときに日本という磁場からアメリカ文化の内奥を照射します(たとえば、最終章附録コラム二篇「原爆乙女」&「『ミリキタニの猫』(2006年)」など)。全セクションにおいて執筆担当者がおすすめする「おすすめ文献」も必見です。ご関心のある方は、ぜひお手にとってみてください!
『よくわかるアメリカ文化史』
巽孝之、宇沢美子編著
B5 / 244ページ
2020年 4月 10日刊行
本体 2,500円+税
※ミネルヴァ書房による本書紹介
※各オンライン書店より注文可能です。
【目次】
はじめに
地図1 アメリカ全図と地域区分
地図2 1861年当時の自由州と奴隷州
序 アメリカ文化史の変容 (巽孝之)
第一部 近代国家以前 Early America
1 アメリカとヨーロッパの邂逅
1 侵略か植民か (加藤有佳織)
2 宗教をめぐって (小泉由美子)
3 植民地文化と性 (加藤有佳織)
コラム1 『ある産婆の日記』――性と医療する女 (加藤有佳織)
コラム2 チャップブック――識字率の向上 (小泉由美子)
2 アメリカの魔女たち (白川恵子)
1 セーラムの魔女狩りとその背景
2 魔女狩りとインディアン・コネクション
3 魔女狩りと文学表象
コラム1 ピューリタン共同体の生活倫理と修辞的言説
コラム2 魔女と映像作品
3 18世紀イギリス植民地と独立戦争
1 ボストン茶会事件 (加藤有佳織)
2 合衆国憲法とザ・フェデラリスト (駒村圭吾)
3 ベンジャミン・フランクリンと出版文化 (佐藤光重)
コラム1 描かれたアメリカ図像の変遷 (加藤有佳織)
コラム2 ベンジャミン・フランクリンの暦 (佐藤光重)
第二部 南北戦争以前 Antebellum America
4 アメリカ固有の文化の誕生
1 ミンストレル・ショー (大和田俊之)
2 『アンクル・トムの小屋』とトム・ショー (常山菜穂子)
3 ミュージカルの誕生 (常山菜穂子)
コラム1 ジャズ・シンガー (大和田俊之)
コラム2 クーン・ソング (大和田俊之)
5 アメリカン・ルネサンス――エマソンとホイットマン (佐久間みかよ)
1 南北戦争前 VS 南北戦争後
2 ラルフ・ウォルドー・エマソン――知識人の作法
3 ウォルト・ホイットマンとほめる文化
コラム1 出版界のライバル――19世紀のボストンとニューヨーク
コラム2 「明白な運命」とカトリック布教
6 ペーパー・ムーン
1 ピール対バーナム (細野香里)
2 世界の詐欺師バーナムの見世物文化考 (細野香里)
3 写真と広告――事始め(冨塚亮平)
コラム1 バーナムとマイケル・ジャクソン (細野香里)
コラム2 象のジャンボとオスカー・ワイルド (冨塚亮平)
7 南北戦争とリンカン大統領
1 リンカンの演説――政治と宗教 (奥田暁代)
2 南北戦争(南部)の遺産 (奥田暁代)
3 南部再建と「黒人文化」形成 (奥田暁代)
コラム1 リンカン映画史 (南波克行)
コラム2 フォークナーからみる南部文学史事始め (山根亮一)
8 見えないものをみる方法――(疑似)科学の想像力
1 身体を読む(疑似)科学――観相学と骨相学 (宇沢美子)
2 人種の科学――アメリカ学派民族学 (宇沢美子)
3 古代エジプトをめぐる人種戦 (宇沢美子)
コラム1 Xからはじまる目には見えない光――X線,ラジウム,原子爆弾 (小林エリカ)
コラム2 エジソンとテスラ(SF) (海老原豊)
9 金鍍金時代
1 資本主義と投機 (久保拓也)
2 物質文化と貧困――汚職と戯画の力 (久保拓也)
3 マーク・トウェインと翻訳の世界 (石原剛)
コラム1 マーク・トウェインの発明品 (久保拓也)
コラム2 鍍金時代の豪邸 (石原剛)
第三部 南北戦争以後 Postbellum America
10 消費文化――複製,カタログ→消耗から消費へ (秋元孝文)
1 貨幣,紙幣論からみたアメリカ
2 デパート,ウィンドーショッピング,カタログ文化
3 『オズの魔法使い』のウィンドー・ドレッシング
コラム1 これぞ贋金?
コラム2 万博とミュージアム,そして見世物文化
11 流行・食・身体美 (若林麻希子)
1 19世紀「アメリカの神経症」大流行
2 食べる文化と食べない文化
3 健康美,不健康美,筋肉美
コラム1 科学的調理法とアメリカの味覚
コラム2 シャーロット・パーキンス・ギルマン『黄色い壁紙』
12 新しい女 (大串尚代)
1 社会改革運動から「所感宣言」へ
2 女性と宗教――スタントン『女性の聖書』をめぐって
3 世紀転換期と新しい女性の出現
4 高等教育と専門職への道
コラム1 幻の女性大統領候補
コラム2 避妊と中絶をめぐって
第四部 20世紀 Twentieth Century America
13 移民と階級
1 すっぱ抜くジャーナリズム (辻󠄀秀雄)
2 人種のるつぼからサラダボールへ――モデル・マイノリティの出現 (辻󠄀秀雄)
3 スポーツとエスニック・アイデンティティ (粂川麻里生)
コラム1 ミスター・ドゥーリーの新聞コラム (辻󠄀秀雄)
コラム2 『ジャングル』 (辻󠄀秀雄)
14 モダニズムとハーレム・ルネサンス (有光道生)
1 俳句とモダニズム
2 キャバレー,ダンス,音楽(ハーレム身体文化)
3 ハーレムを越えた「新しい黒人」のトランスナショナリズム
コラム1 キング牧師をめぐる記憶と忘却
コラム2 マルコムX――変身し続けるセルフ・メイド・マンの物語
15 ポップカルチャー
1 音楽――ジャズ/ブルース (佐久間由梨)
2 ハリウッド映画と作られた西部 (川本徹)
3 ディズニーランドとアメリカ (常山菜穂子)
4 カルト映画の逆説 (松井一馬)
5 ラジオの時間 (三添篤郎)
6 「法と秩序」は永遠に――長寿番組からみえてくるアメリカ (渡部桃子)
7 インターネット,メディアと読者の変容 (長澤唯史)
8 戯画と漫画 (中垣恒太郎)
9 ペーパーバックとアメリカ (尾崎俊介)
10 アメリカの自己啓発文学 (尾崎俊介)
11 ポップカルチャーとしての乗り物 (山根亮一)
12 有名人文化と社交界 (大串尚代)
コラム1 ハリウッドと日本 (中垣恒太郎)
コラム2 日本人俳優たち (川本徹)
16 冷戦と核とカウンターカルチャー
1 赤狩りとマッカーシズム (渡邉真理子)
2 ビート・ジェネレーションからヒッピーへ (渡邉真理子)
3 ヴェトナム戦争の記憶とトラウマ (渡邉真理子)
コラム1 広島からゴジラへ (粂川麻里生)
コラム2 冷戦,9.11,トランプ政権時代――『高い城の男』という託宣 (下條恵子)
17 現代セクシュアリティ (渡部桃子)
1 ベティ・フリーダン――全米女性機構(NOW)創設者の2つの顔
2 性革命と,もう一つの(ヒ)ストーリー
3 トランスジェンダー
コラム1 アドリエンヌ・リッチと「レズビアン連続体」
コラム2 ゲイ・イズ・グッドからLGBTへ――ゲイ解放運動の軌跡
第五部 戦争と環境 Intertextual America
18 戦争が作った/壊した「アメリカ」像
1 メイド・イン・オキュパイド・ジャパン――占領下の日本製品を集める (田中荘子)
2 ノベルティ産業からみた占領期日米関係 (田中荘子)
3 ヴェトナム戦争 (濟藤葵)
4 キューバ危機 (濟藤葵)
コラム1 ものから見える世界――5W1Hの問いかけ (田中荘子)
コラム2 POW/MIAの物語 (濟藤葵)
19 環境をめぐるアメリカの想像力 (松永京子)
1 <汚染の言説>と環境運動
2 核汚染を語る
3 ネイティヴ・ニュークリア・ナラティヴ
コラム1 「インディアンの涙」は「偽物」?
コラム2 ブラックヒルズの「ウラン・ブーム」
第六部 環太平洋的ヴィジョン Trans-Pacific America
20 海とアメリカ捕鯨
1 ペリーが浦賀にやってきた (田ノ口正悟)
2 環太平洋と黄禍論 (田ノ口正悟)
3 ハーマン・メルヴィルと捕鯨文学 (田ノ口正悟)
コラム1 一枚の絵,アレゴリーとしてのパナマ運河 (大木雛子)
コラム2 他者の顔貌――ペリーとテイラー (深瀬有希子)
21 科学最先端からみるアメリカ
1 再生医療 (八代嘉美)
2 遺伝子と家族の多様化 (波戸岡景太)
3 宇宙開発 (波戸岡景太)
コラム1 トランス・サイエンスの壁を超える (八代嘉美)
コラム2 科学を名づけて,手なずける――新井卓「49 pumpkins」の三つの企み (波戸岡景太)
22 日米比較文化考――広島・長崎の語り方
1 ノンフィクション・ノヴェルが歴史を作る――ジョン・ハーシー『ヒロシマ』 (巽孝之)
2 原爆文学・漫画はグローバル化する (宇沢美子)
3 空から死神が降臨する――オバマ大統領広島演説 (巽孝之)
コラム1 原爆乙女 (宇沢美子)
コラム2 『ミリキタニの猫』(2006年) (宇沢美子)
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