2015/03/12

巽先生が編集委員の一人をつとめられる、定本荒巻義雄メタSF全集の第4回配本『宇宙25時 (第 2巻)』(彩流社)刊行中!

作家・荒巻義雄氏の初期メタSFの名作が、全7巻にて、彩流社より復刻中。巽先生が編集委員をつとめられています。『白き日旅立てば不死 (第 3巻)』『聖シュテファン寺院の鐘の音は (第 4巻)』『時の葦舟 (第 5巻)』に引き続き、第4回配本『宇宙25時 (第 2巻)』が刊行されました!

今回配本の『宇宙25時』は、1971年〜73年に『SFマガジン』に発表された四つの冒険伝奇から構成されています。一つ目の「レムリアの日」では、億年の時空を越え白亜紀レムリアの地へと漂着した、蒼き種族のイザミナスとナギが登場し、生物の進化/退化が問われます。つづく「ああ荒野」では、シベリアノの大地へと分け入る猟人が、冬眠直前の「野の部族」と出会い、美しい七人の花嫁と石女サガのもとで厳しい越冬を経験。三つ目の「無限への崩壊」は地中海を舞台とし、ミュータンツ・ハンターの「ぼく」が、恋人エリナの喪失をトラウマに、ハンターと獲物の境界に徐々に捕らわれていく様子が描かれます。最後の表題作「宇宙25時」は虚無に溢れる近未来、銀河Xに所属するミュータントのガーランは、「ある指令」を受け地球へ行くことに…。

本書には、荒巻氏による1978年のあとがき「私の助走時代」と、1981年のインタビュウ「術・マニエリスム・SF」が収録。インタビュウは、新戸雅章氏、志賀隆夫氏、永田弘太氏を聞き手、巽先生と波津博明氏をオブザーバーとして行われたもの。荒巻氏の思想形成に建築が与えた影響、評論「術の小説論」と創作の関係、マニエリストとしての美意識など、氏の真髄に迫ります。また、荒巻氏と同じく北海道出身の作家・川又千秋氏による書き下ろしの解説も収録。『宇宙25時』の「不可思議な吸引力」を、「既視感」ならぬ「未視感」として捉えご説明されます。

なお、巻末には、単行本未収録の中篇「アンドロイドはゴム入りパンを食べるか?」と「ポンラップ群島の平和」が掲載されています。後者は、ルイス・シャイナー編纂のSFアンソロジー『音楽の絶えるとき』に収録されました。同様に所収の、1993年の巽先生による解説では、60年代における荒巻作品との出会いと、80年代におけるサイバーパンクとの出会いが、「何かが起こりはじめている」という既視感をもって接続され、本全集の最終配本「柔らかい時計」、今回所収の「ポンラップ群島の平和」らが英語圏へ輸出されていった経緯が明されます。

今回も付録には、荒巻氏による解説「メタSFから冒険伝奇へ」が収録。また、大和田始氏による「<書くこと>と<読むこと>」、さらに、「柔らかい時計」「ポンラップ群島の平和」を英訳されたカズコ・ベアレンズ氏による「あの夏、ニューオリンズで」もお読みいただけます。訳は巽ゼミOBの海老原豊さんによるものです。本作もなにとぞお見逃しなく!


『宇宙25時 (定本荒巻義雄メタSF全集 第 2巻)』
荒巻義雄
巽孝之、三浦祐嗣編
イラスト:中野正一
装幀:渡辺将史
推薦(帯):円城塔
四六判、473ページ
3,200円 + 税
2015年02月刊行
彩流社による本書詳細

【目次】
宇宙25時
 レムリアの日
 ああ荒野
 無限への崩壊
 宇宙25時

私の助走時代——あとがきに代えて
<インタビュウ>荒巻義雄「術・マニエリスム・SF」
解説 川又千秋

アンドロイドはゴム入りパンを食べるか?
ポンラップ群島の平和
解説 柔らかい艦隊——荒巻義雄「ポンラップ群島の平和」 巽孝之

Introduction (Takayuki TATSUMI)

<付録 月報 4>
メタSFから冒険伝奇へ 荒巻義雄
<書くこと>と<読むこと> 大和田始(翻訳家)
あの夏、ニューオリンズで カズコ・ベアレンズ(ニューヨーク州立工科大学助教・社会心理学専攻/海老原豊訳)

*なお、全集全体は下記のとおりです:
  • 第1巻「柔らかい時計」(第7回配本)// 2015 年5月
  • 第2巻「宇宙25 時」(第4回配本)// 今回配本
  • 第3巻「白き日旅立てば不死」(第1回配本)// 既刊
  • 第4巻「聖シュテファン寺院の鐘の音は」(第2回配本)// 既刊
  • 第5巻「時の葦舟」(第3回配本)// 既刊
  • 第6巻「神聖代」(第5回配本)// 2015 年3月
  • 第7巻「カストロバルバ/ゴシック」(第6 回配本)// 2015 年4月

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