科研費研究会
ナサニエル・ホーソーンの二つの時間
ナサニエル・ホーソーンの二つの時間
講師:諏訪部浩一(東京大学)
日時:2021年 7月 31日(土)18:00-20:00
研究代表者:下河辺美知子(成蹊大学)
研究分担者:巽孝之、舌津智之(立教大学)
※ Zoomによるオンライン開催
※ 参加ご希望の方は、mayflower.compact.41★gmail.com(★→@)小泉までメールでお申し込みください。
【概要】※フライヤーより抜粋
本基盤研究(B)はメイフラワー・コンパクトが内包していた「排除/包括の理論」をさぐることによって、環大西洋文化を再定位し、アメリカ中心に進んできたグローバリゼーションの向かう方向を、環太平洋的視座も連動させつつ見定めることを目的としている。
ナサニエル・ホーソーンはアメリカ小説の発展にさまざまな形で寄与した作家であり、そのような作家の代表作『緋文字』が、植民地時代のアメリカを舞台とした「歴史ロマンス」であることは興味深い。
19世紀半ばの『緋文字』に、そしてその主人公達に「近代小説」的な特徴があらわれても不思議ではない、とひとまずはいえるだろうか――ピューリタンに「近代人」の、彼らの作った共同体に「近代国家」の祖型を見ることが可能ならなおさらである。だが、理屈としてはそうだとしても、「歴史」に材をとった作品が、そのまま「近代小説」になるわけではない。17世紀の人間は 19世紀の人間とはやはり違うのだ。ホーソーンにとって、そうした歴史の<他者性>への意識と「ロマンス」という形式の選択はおそらく通底しているはずである。ホーソーンのピューリタン共同体に、アメリカ的な「排除/包括」の論理がリアルに感じられるとすれば、それはきっと、この作家にとって「歴史」があくまで理解しがたい<他者>であり、それゆえに肉薄せねばならなかったためだろう。
本発表では、ホーソーンの「歴史もの」に 17世紀と 19世紀という「二つの時間」が流れていることを数編の短編などに触れながら確認し、それが『緋文字』という「悲劇」と、その主人公達の主体性のあり方にどのように反映されているのかを見ていきたい。
【関連リンク】
- 科学研究費・基盤研究 (B):「メイフラワー・コンパクトにおける「排除/包括の理論」と環大西洋文化の再定位」プロジェクトウェブサイト
- 03/26: 科研費研究会「アメリカン・サイエンスとパラノイド・スタイルーーアメリカ科学思想史をジェディディア・モースから始めてみる」オンライン開催のお知らせ(14:30-16:30)(CPA: 2021/03/15)
- 02/28: 科研費研究会「ハート・クレイン——環大西洋の史学/詩学」オンライン開催のお知らせ(13:00-15:30)(CPA: 2020/02/14)
- 11/21: オンライン・科研費研究会「アメリカのネヘミヤとエズラが刻印したもの」(CPA: 2020/10/21)
- 02/19: 科研費研究会「地上の天と頭上の天――ピューリタン起源のダブルビジョン」@成蹊大学 6号館18:30-20:30/佐藤光重先生がご登壇なさいます!(CPA:2020/01/18)
- 11/30: 科研費研究会「トランスアトランティック・ゴシック――ヘンリー・ジェイムズの語り」@成蹊大学 6号館15:30-18:00(CPA: 2019/11/22)
- 02/24: 科研費研究会・牧野理英先生ご講演「「シマ」をめぐる日系アメリカと南部、そしてその敗北の共振――ワカコ・ヤマウチとテネシー・ウィリアムズ」のお知らせ@成蹊大学14:00-16:00(CPA: 2019/01/25)
- 02/09: 科研費研究会・石川敬史先生ご講演「フェデラリスト政権と奴隷貿易」のお知らせ@成蹊大学16:00-18:00(CPA: 2019/01/23)
- 06/27: マイケル・J・コラカチオ先生特別講演会 “Consciousness and Ascription: Emerson and the Lonely Subject” のお知らせ@慶應義塾大学 三田キャン
- 大学院学位論文リスト
【関連書籍】
諏訪部浩一『ウィリアム・フォークナーの詩学――1930-1936』(松柏社、2008年)
諏訪部浩一『「マルタの鷹」講義』(研究社、2012年)
諏訪部浩一『カート・ヴォネガット――トラウマの詩学』(三修社、2019年)
諏訪部浩一責任編集『アメリカ文学入門』(三修社、2013年)
フォークナー著、諏訪部浩一訳『八月の光』(岩波文庫、2016年)
フォークナー著、諏訪部浩一訳『土にまみれた旗』(河出書房新社、2021年)