2013/04/22

05/06:成蹊大学にて科研費研究会「世界文学とユートピア—J・M・クッツェーの21世紀」開催のお知らせ

5月6日(月)成蹊大学にて、巽先生が携わっている文部科学省科学研究費主催による共同研究会「モンロー・ドクトリンの行為遂行的効果と21世紀グローバルコミュニティの未来」の2013年度第1回研究会「世界文学とユートピア——J・M・クッツェーの21世紀」が行われます。

2013年度第1回研究会
世界文学とユートピア——J・M・クッツェーの21世紀
講師:中井亜佐子(一橋大学大学院言語社会研究科教授/英文学:モダニズム、現代英語文学)
日時:2013年5月6日(月・祝)16:00-18:00
会場成蹊大学10号館2階 第2中会議室(*地図はこちら
主催科学研究費・基盤研究(B)「モンロー・ドクトリンの行為遂行的効果と21世紀グローバルコミュニティの未来」
研究代表者下河辺美知子(成蹊大学)
研究分担者巽孝之(慶應義塾大学)、舌津智之(立教大学)、日比野啓(成蹊大学)

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(※科学研究費・基盤研究(B)ホームページより)

●講師紹介(中井亜佐子先生):
単著に『他者の自伝 ――ポストコロニアル文学を読む』(研究社、2007年)、The English Book and Its Marginalia: Colonial/postcolonial Literatures After Heart of Darkness (Rodopi, 2000)。共編著に『「終わり」への遡行―ポストコロニアリズムの歴史と使命』 (英宝社、2012年)、『ジェンダー表象の政治学―ネーション、階級、植民地』 (彩流社、2011年)。

講演紹介
「世界文学」(Weltliteratur) はゲーテの理念として知られるが、マルクス=エンゲルスは『共産党宣言』の中で、複数の国民文学から一つの世界文学が形成される過程を、ブルジョア階級が世界を従属させていくプロセスとして再定義した。翻訳を介すことなく流通し、グローバルな文学市場を席巻する現代英語文学は、まさにこの意味での「世界文学」だと言えるだろう。
現代の著名な英語作家の多くは活動の拠点を英米に置いているが、J・M・クッツェーは2002年まで南アフリカに住み続けていた。彼の小説はアパルトヘイト期から黒人政権誕生後の南アのローカルな読者と、グローバルな知的階級読者という、異なるオーディエンスに向かって同時発信されていた。一方、オーストラリアに移住し、2003年にノーベル賞を受賞した後のクッツェーは、英語文学が世界文学、グローバル文学として消費される現状を、作品中で自ら批判的に問い直している。その思想は、ガヤトリ・スピヴァクからマルクスに遡るグローバリゼーション批判の系譜上に位置づけることができよう。本発表では、最新作 The Childhood of Jesus (2013) を手がかりとし、英語文学が普遍的な世界文学というユートピアの構想に失敗していく軌跡を、クッツェーとともに辿っていきたい。

研究会紹介
本基盤研究(B)は、「全体性」を志向する欲望と「部分」であることへの不安を刻印するモンロー・ドクトリンの普遍的な力学に注目しつつ、この言説がアメリカ文学・文化の空間的および時間的位相を定義づけてきた歴史的経緯をグローバルに検証する試みである。

【関連リンク】
科学研究費・基盤研究(B)ホームページ
2012年度第3回「自然主義文学と動物表象」(CPA: 01/12/2013)
2012年度第2回「植民地を描き足すこと」(CPA: 07/15/ 2012)
2011年度第3回「ナサニエル・ホーソーンと戦争」(CPA: 11/24/2011)
2011年度第2回「グローバル時代の文学地図」(CPA: 09/30/2011)
2010年度第4回「チャイニーズボックスとしてのネイティヴ」(CPA: 02/16/2011)
2010年度第3回「アメリカン・ルネッサンス70周年」(CPA: 11/26/2010)
2010年度第2回「テネシー・ウィリアムズの新世紀」(CPA: 11/03/2010)
2010年度第1回「モンロー・ドクトリンの歴史」(CPA: 06/29/2010)

【関連書籍】
中井亜佐子『他者の自伝 ――ポストコロニアル文学を読む』(研究社、2007年)












中井亜佐子The English Book and Its Marginalia: Colonial/postcolonial Literatures After Heart of Darkness (Rodopi, 2000)












中井亜佐子共著『「終わり」への遡行―ポストコロニアリズムの歴史と使命』 (英宝社、2012年)












中井亜佐子共著『ジェンダー表象の政治学―ネーション、階級、植民地』 (彩流社、2011年)












J. M. Coetzee The Childhood of Jesus (2013)