2024/08/08

巽先生が編集委員の一人を務められるアメリカ研究ウェブ雑誌 JTAS最新号(Vol. 15, Issue 1, 2024)が絶賛刊行中です!

巽先生が編集委員の一人を務められるアメリカ研究ウェブ雑誌 The Journal of Transnational American Studies (JTAS) の最新号(Vol. 15, Issue 1, 2024)がアップされています!本号は、四本の論文を収録するほか、最新研究書からの抜粋を集めたセクション “Forward”では、二つの著作が選出されています。一つ目は、海上焼却を国際関係・外交史・環境史・アメリカ国際史の観点から扱った Dario Fazziの Smoke on the Water: Incineration at Sea and the Birth of a Transatlantic Environmental Movement (Columbia UP)、二つ目は、大ヒットミュージカル作品『ハミルトン』を人種・ジェンダー理論の観点から扱った Vanessa Vollmannの Lin-Manuel Miranda’s Hamilton: Silenced Women’s Voices and Founding Mothers of Color: A Critical Race Theory Counterstory (Peter Lang Publishers)。ご関心のある方は、ぜひこの機会にアクセスを!


Vol. 15, Issue 1, 2024

CONTENTS
Editor in Chief's Introduction
Locating New Fields in Transnational American Studies / Hornung, Alfred

Articles
  • Reading Cold War Ruins in Bong Joon-ho’s Parasite / Chang, Yana Ya-chu
  • “Suppressed by swords and lead”: Radical Polish and Slovak Newspapers Combat Colonialism / Zecker, Robert M.
  • No Simple History: Nikkei Incarceration on Indigenous Lands / Inouye, Karen M.
  • Re-Animating Europe: The Transnational Visual Grammar of “Zeichentrick” in Marshall Plan Propaganda / Mehring, Frank
Forward
  • Forward Editor's Note / Reimer, Jennifer
  • Smoke on the Water: Incineration at Sea and the Birth of a Transatlantic Environmental Movement / Fazzi, Dario
  • Lin-Manuel Miranda’s Hamilton: Silenced Women’s Voices and Founding Mothers of Color: A Critical Race Theory Counterstory / Vollmann, Vanessa

PREVIOUS ISSUES
  • 1.1 (2009) 巽先生が編集主幹を務められる Maik Twain Studies Vol. 2(日本マーク・トウェイン協会)“The War-Prayer” 特集を再録。大学院ゼミ OBの辻秀雄先生(首都大学東京)、有光道生先生(本塾法学部)の論文を収録(*大学院 OBOG業績)。
  • 2.1 (2010) W・E・B・デュボイスの未発表論考 “The Afro-American” を収録。また、 JTAS 編集顧問を務め、2009年に逝去されたエモリー・エリオット氏の “Terror, Aesthetics, and the Humanities in the Public Sphere” を収録。
  • 3.1 (2011) 2009年ワシントン D.C. で開催されたアメリカ学会(American Studies Association)でのシンポジウム “Redefinitions of Citizenship and Revisions of Cosmopolitanism: Transnational Perspectives” に基づく論文を掲載。
  • 3.2 (2011) フィシュキン氏提唱の “DEEP MAPS” に関する論文とそれをめぐる討論を収録。
  • 4.1 (2012) デリダ、サイードに遡る “concurrency” を鍵に、先住民とアジア系に焦点を置く 2つの特集 “Charting Transnational Native American Studies: Aesthetics, Politics, Identity” と“Redefining the American in Asian American Studies: Transnationalism, Diaspora, and Representation”を収録。
  • 4.2 (2012) 特集 “Revolutions and Heterotopias” を掲載。
  • 5.1 (2013) 2012年度アメリカ学会年次大会に基づく特集 “American Studies: Caribbean Edition” を収録。プエルトリコで開催された本大会は、カリブ諸島の役割を探求しつつ、両者を地理的に区分しアメリカを中心に据える視点を再考。
  • 6.1 (2015) 創刊から 6年。フィシュキン氏の序文は、種々のトピック(国際関係 / 翻訳 / 宗教 / 記憶 / 人種・エスニシティ/ 比較文化研究 /国家アイデンティティ等)を提示しつつ、本誌の主題 “Transnational American Studies” を再考。序文セクションは、巽先生も寄稿された Translated Poe を収録。
  • 7.1 (2016) 特集 “Sweden and America” は、“circulation” と “asymmentry” を鍵に、歴史/思想/表象の切り口から両者の関係を再検討。序文セクションは、大学院春学期(2016)に通読したフィシュキン氏の Writing America: Literary Landmarks from Walden Pond to Wounded Knee (Rutgers UP, 2015) を掲載。
  • 8.1 (2017) 特集 “La Floride française: Florida, France, and the Francophone World”を掲載。序文セクションには、ワイ・チー・ディモク先生編纂のアメリカ文学アンソロジーAmerican Literature in the World: An Anthology from Anne Bradstreet to Octavia Butler (Columbia UP, 2017) も収録。
  • 9.1 (2018) 特集 “Transnational American Studies as Transdisciplinary Collaboration”を掲載。序文セクションには、巽先生の巽先生の英語最新著書 Young Americans in Literature: The Post-Romantic Turn in the Age of Poe, Hawthorne and Melville から Chapter 2 “Origins of Originality: Poe—Hawthorne—Noguchi”を収録。
  • 10.1 (2019) 二つの特集を収録。 “Archipelagoes/Oceans/American Visuality” は、六本の研究論文/ 16点あまりの造型芸術・インスタレーション/応答の三部構成。前号に引き続く、学際的なアプローチを通じた環境/社会/文化に関わる議論を収録。“Transnational Black Politics and Resistance from Enslavement to Obama” は、編者による序論と五本の論文を通じて、18世紀から現代におよぶブラック・アクティヴィズムを世界規模で考察。
  • 10.2 (2019) 詩人、批評家、JTAS 創設メンバーの一人シャーリー・ジョクリン・リム氏特集: “FESTSCHRIFT: THE POETRY & POETICS OF SHIRLEY GEOK-LIN LIM”を収録。 計八本の論考を通じ、「旅」や「家族」の主題/ 動物の(時にグロテスクな)比喩/「過去」との出会い方・描き方等々に注視しながら、リム氏の「トランスナショナル」な主体/主題/文体が同時代の性差/地域/政治/環境関連アクティヴィズムと密接な様相をもつものとして照射。特集最後には、五つの未発表詩作品が特別掲載。
  • 11.1 (2020) 特別フォーラム “American Territorialities”を掲載。Transnational American Studies がそれ自身の批判的視座として抱える問い「国家 “nation state”とは何か」を念頭に、“American Territorialities”を鍵語に、Craig Santos Perezの “American imperial terripelago” や Gloria Anzaldúaの “borderlands” をふまえ、法的 /地理的 / 地図的「境界」の諸交渉を視野に入れながら、アメリカ国内外における植民地主義 / 帝国主義を再検証する。冒頭論文は、Brian Russell Roberts氏の “borderwaters”の概念を提示し、続く七本の論考はその射程を国内外に張り巡らせ——先住民 / アフリカ系アメリカ / プエルトリコ / ボリビア / ハワイ / グアム等々——、最後二本の “Afterword”で閉じられる。
  • 11.2 (2020) 二つの特別フォーラムと一つのシンポジウムを掲載。一つめの特別フォーラム “Covid-19 Commentary”は、四本の論考を収録。新型コロナウイルス感染症による地球規模の影響を脱国家的アメリカ研究の視座——台湾、香港、トルコ、オーストラリア——から捉えつつ、研究教育方法およびアメリカのいまゆれ動く世界的立ち位置の把握方法を探究。二つ目の特別フォーラム “Transnational Nuclear Imperialisms”は、五本の論考から構成。核産業の諸問題を先住民共同体の搾取・破壊・排除に起因すると明確にみなし、その “nuclear imperialism”に対する抵抗を脱国家的枠組から捉えることで、それぞれの専門性・地域性を抱えてきたニュークリア・スタディーズ研究者同士の対話を再活性化させることを企図。続くシンポジウム“Framing American History: A Symposium in Honor of Thomas Bender”は、五本の論考を掲載。アメリカ史研究における “Synthetic Thinking”の意義を念頭に、脱国家的な視座による歴史記述の可能性を再考。
  • 12.1 (2021) 本号は “Responses to the 2020 Global Uprisings”と題した特集を掲載。ジョージ・フロイド事件が前号に引き続き取り上げられ、Kevin K. Gaines氏による“Reflections on Ben Okri, Goenawan Mohamad, and the 2020 Global Uprisings”は、ナイジェリアの作家批評家 Ben Okriとインドネシアの作家批評家 Goenawan Mohamadの論考を参照し、新型コロナウイルス感染症が孕む政治的・人種的問題にも言及しながら、ジョージ・フロイド事件を歴史的かつトランスナショナルな視座から再考。本論文につづいて、Okriの “‘I can’t breathe’: Why George Floyd’s Words Reverberate Around the World”と、Mohamadの“Strange Fruit”がリプリントされている。
  • 12.2 (2021) 本号はスペシャル・フォーラム “Global Huck: Mapping the Cultural Work of Translations of Mark Twain’s Adventures of Huckleberry Finn”を収録。四大陸九地域——イラン、フランス、アラブ(エジプト、シリア)、ドイツ、帝政ロシア/ソ連、ブラジル、スペイン、インド、台湾——におよぶ『ハックルベリー・フィンの冒険』の読者受容、および翻訳の工夫やその限界に焦点が置かれている。本フォーラムのイントロダクション “Global Huck: Mapping the Cultural Work of Translations of Mark Twain’s Adventures of Huckleberry Finn”には、日本から石原剛先生(東京大学)が共同執筆者としてご参加。
  • 13.1 (2022) 本号は、スペシャル・フォーラム”The Molecular Intimacies of Empire”を収録。新型コロナウィルスがその脅威を世界規模で拡大させていくなかで、経済・社会・環境的な不平等を強く露呈させている現状に鑑み、ミクロな粒子的領域とマクロな国境横断的領域の交錯地点とその問題系を批判的に探求。九本の論文と一本の対談から構成され、その主題と方法論——フード・スタディーズ、視覚文化、科学史、文学研究、環境正義、クリティカル・エスニック・スタディーズ——は多岐に渡る!
  • 13.2 (2022) 本号では、特集 “Teaching and Theorizing Transnational American Studies Around the Globe”が組まれ、トランスナショナル・アメリカン・スタディーズをいかにして研究・理論化するかだけでなく、いかにして教えるかに注目した論考が五本掲載。Forwardセクションには十二本の論考が収録され、Repriseセクションは、“insect”---昆虫にあらためて目を向けることで「アメリカ」を従来とはまた異なるかたちでトランスナショナルに検討する論考四本を掲載。
  • 14.1 (2023) 本号は、特集として “Archipelagic Spaces and Im/Mobilities”が組まれており、九本の論文を掲載。本特集は、“transnational American studies,” “archipelagic studies,” “mobility studies”を有機的に合流させ、大陸的で帝国主義的で神話的に「硬直」したアメリカの “im/mobilities”に関わる支配的な概念を批判的に再考し、今日必要とされる空間/土地/アイデンティティ/力関係の新たな認識・把握を目指す。
  • 14.2 (2023) 本号は、特集として “Diagnosing Migrant Experience: Medical Humanities and Transnational American Studies”が組まれ、五本の論考が掲載。本特集は、“transnationality,” 国境横断、移動の諸概念を、トラウマ、メンタルヘルス、医療格差の問いに関連付けながら、トランスナショナル・アメリカン・スタディーズとメディカル・ヒューマニティーズの豊饒な交点を探究し、明らかにしていく。

【関連書籍】
The Routledge Companion to Transnational American Studies (edited by Nina Morgan, Alfred Hornung, and Takayuki Tatsumi, Routledge, 2019)