2024/08/08

エリック・ラーソンの『万博と殺人鬼』(野中邦子訳、早川書房)が文庫化・刊行され、巽先生が解説「シカゴ万博の光と影」を寄稿されています!

本作『万博と殺人鬼』(野中邦子訳、早川書房)は、1893年のシカゴ万博を中心題材に、万博のデザインから現場監督までを主導した高層建築家ダニエル・ハドソン・バーナムと、万博会場のシカゴを拠点の一つとした連続殺人鬼ヘンリー・ハワード・ホームズを主軸に織り成された物語で、2004年度エドガー賞(犯罪実話部門)を受賞。シカゴ万博に込められたシカゴ関係者の熱情や希望(と多くの困難や失望)がある一方、殺人鬼ホームズに無惨にも次々奪われていく若く儚い命。光輝くホワイト・シティと残忍なブラック・シティがいかに併存していたかが魅力的な群像劇を通して克明に綴られます。

巽先生による解説「シカゴ万博の光と影」では、著者エリック・ラーソンの業績を紹介しつつ、シカゴ万博の重要なバックグランドの一つとして、白人とアメリカ先住民の「熾烈な最終戦争の終結」をご指摘されます。特に、1890年にサウスダコタ南西のウーンデッド・ニーで行われたラコタ族大虐殺、およびその三年後、シカゴ万博と同時期の歴史家フレデリック・ジャクソン・ターナーによる「アメリカ史におけるフロンティアの意義」の提示、そこではアメリカ的民主主義は、新たなフロンティアに挑戦するたびに新たな活力を得るという見解が説かれます。そのうえで、シカゴ万博がその展示物において「白人文明という中心と非白人文明という周縁を無意識のうちに構造化していた」点に注目し、その「光と影」をあらためて浮彫にします。なお、巽先生による解説は、こちらから全文お読み頂けます!

ぜひご一読ください!



『万博と殺人鬼』
エリック・ラーソン、野中邦子訳
文庫、685頁
早川書房
1,848 円(税込)
2024年 7月 18日
ISBN: 9784150506117

【目次】
物語を始める前に
プロローグ——オリンピック号の船上で 1912年
第一部——凍れる音楽 シカゴ 1890-91年
第二部——激しい闘い シカゴ 1891-93年
第三部——ホワイトシティ 1893年 5月-10月
第四部——露見する犯罪 1895年
エピローグ——最後の交差

謝辞
引用と資料について
訳者あとがき
解説 巽孝之
図版クレジット

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