『SF評論入門』
編著:荒巻義雄、巽孝之
A5 判並製、472頁
小鳥遊書房
出版年月日:2024年 8月 30日
本体3,800円+税
ISBN: 978-4-86780-055-3
※小鳥遊書房による本書紹介
巽先生が編著の一人を務められた『SF評論入門』の書評をまとめました。今後も随時更新していきます。
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本書は、90歳を超えてなお多作なベテラン SF作家であり評論家でもある荒巻義雄と、SF評論の世界的権威である巽孝之が編者となり、気鋭のSF評論家たちの論稿を一望できるよう編んだ評論集だ。12本の論考は「古典 SF」「SF作家」「SFジャンル」「SFとテクノロジー」「現在SF」の 5部にまとめられている。扱われるのは SFにおける古典であるアシモフ、星新一から、藤本タツキのような近年の漫画家まで多彩だ。自身の枠組をつねに自問するSF的な視点を反映するかのように、本書に収録された SF評論のスタイルは多様で読み応えがある。(略)SFをめぐる議論は守旧に陥りがちな人々に刺激を与え、日本社会の強みを文化面から支えてきた。それを再認識するうえでも、本書は有用だ。——大澤博隆『週刊東洋経済』2024年11月30日
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本書『SF評論入門』は、そうしたSFを取り巻く状況がすっかり変わってしまった、「現代における SF評論の意味」をあらためて問い直していく一冊だ。編者は SF作家・SF評論家として活躍し二三年には『SFする思考』で日本 SF大賞も受賞した荒巻義雄にアメリカ文学者の巽孝之の二人で、「日本における SF評論が、なおも SFでしかできない未来をいかに展望し世界を活性化するのか、我々は是非とも知りたいと切望するものです。」と各評者に依頼状を送り、集まり・編集した結果が本書となっている。構成としては「古典 SFをどう語るか」「SF作家をどう語るか」「SFジャンルをどう語るか」「SFとテクノロジーをどう語るか」「現代 SFをどう語るか」と対象作品の年代と SFとの+αの関係性でわかれていて、古いものはメアリ・シェリーやアイザック・アシモフ、新しいものでいえば藤本タツキの漫画『チェンソーマン』までが網羅されている。(略)SFは読むこと、もしくは書くことだけでなく、語ることにも他のジャンルにはない独特な魅力が備わっている。それが本書を読むとよくわかるし、『SF評論入門』の名にふさわしく、いっちょ自分も語ってみようかなと思わせてくれる一冊だ。——冬木糸一「現代におけるSF評論の意味」『週間読書人』2024年11月15日(3565号)
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日常のすべてが加速度的に SF化している今日、「SF評論に何ができるのか?」という挑発的な問いを掲げた荒巻義雄・巽孝之編『SF評論入門』は、文芸から映画や美術などの諸表現ジャンルを横断し、現代思想、科学テクノロジーの現代史から未来へ至るヴィジョンなどを内包した多様な知の取り組みを収めたスリリングな論集である。(略)冒頭の巽による「『SF評論入門』緒言」「序説 SFをいかに語るか」は戦後以来の SF評論、SF研究史を簡潔に総括し、終章に位置付けられた荒巻の「六〇年代からの証言」は、階層的戦後日本 SF史と本書の各論の解説を連結し、さらなる次世代に SF評論への参入を誘う。——長山靖生「次世代にSF評論への参入を誘うスリリングな論集」『SFM』2024年12月号
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今や一般名詞の「SF」だが、編著の荒巻ら日本 SF第一世代が登場した 1960年代から「SFとは何か」「SFで何を書くか」と論考が続く。本書は気鋭の SF評論家 12人の力作論稿を収録。ハイライン、クラーク、アシモフ、ディックに星新一、光瀬龍、小松左京、筒井康隆など海外日本の古典・定番作家から最新の人気漫画「チェンソーマン」まで、縦横無尽な論及に「SFを語る楽しさ」が満ちる。——『北海道新聞』2024年9月15日朝刊