2012/05/01

Book Reviews『サイバーパンク・アメリカ』


巽孝之『サイバーパンク・アメリカ (KEISO BOOKS)』
勁草書房、1988年

今回の書評集では、1988年に刊行された巽先生の処女作『サイバーパンク・アメリカ』を取り上げます。第一作目にして、そしてSF研究にして、日米友好基金賞を受賞された記念すべき著作です。受賞記事も特別掲載いたします。お見逃しなく!

そのギブスンをはじめ、ブルース・スターリング、ジョン・シャーリイ等十一人の作家、編集者の仕事やその知的背景を追ってインタビューも含めて構成されたのが本書である。小型の本であり、よくある手軽な紹介と思って手にとったら、とんでもない。完璧にとは言えないが、かなりの濃い密度で、今の時代がなぜこの分野を必要としているかが描き出されている。
栗本慎一郎『朝日新聞』02/05/1989

B6判二七〇ページの本書を最初に手にとったとき、一七〇〇円はちょっと高いかな、という気がした。しかし読み進んで内容の豊富さに感心し、巻末の三〇ページにも及ぶ細かい活字の「サイバーパンク書誌目録」と「サイバーパンク年表」まできて、むしろ安いという印象にかわった。2月の『朝日新聞』書評欄で栗本慎一郎がいみじくも述べていたように、お手軽なサイバーパンク紹介書ではなく、立派な研究書である。
平山洋『パピルス』05/15/1989

この本で巽はフィールドワークに徹する。肉声を集め、コンベンションの「のり」を再現し、ギブスン、スターリング、シャーリー、ディレーニとゴキゲンな談義を展開する。俊足のフィールダーの、大リーガー的ハッスルプレイ。いいじゃないか、こういうのって。
佐藤良明『翻訳の世界』03/1989

かくして最後に本書は、SFの現実を建設的な言説に再構成してみせたという点において、「SF批評の体裁をとったSF」でもあり、以上述べた存立の構造ゆえにまた、新しい文芸批評のひとつの方向性を示唆するものであると言っても、おそらく過言ではない。
後藤将之『週刊読書人』02/27/1989

サイバーパンクの熱気むんむんの中に入っている読者にこんな書評は必要ない。彼らはすてに著者の能力をよく知っている。私はこの機会に、一般的に現代文学に関心のあるひとに本書を勧めたいのだ。そうして本書で論じられ、インタビューされている作家(ギブスンをはじめ、ブルース・スターリング、ジョン・シャーリー、それからサイバーパンク・プロパーではないがディレイニーなど)の邦訳作品を読んでいただきたい。現在の米国ミニマリズム小説に満足できない読者には特に。
志村正雄『週刊ポスト』04/21/1989

ディレイニーは言う、「サイバーパンクという私生児には当然『父』は存在しないが——あるいは、あまりにも父が多すぎて不在同然なのだが——厳然として『母』はいるんだ」と。たしかにこのディレイニーの言葉は、サイバーパンクのみならず本書サイバーパンク・アメリカの陰画までも垣間見せてくれるほど示唆的だ。80年代を刻んだサイバーパンクを語る本書に、もし続編が書かれるとしたら、それは確実に母たちの物語をも綴るにちがいない。
宇沢美子『アメリカ学会会報』11/25/1989

そしてサイバーパンクが横断し、習合し、蹂躙したさまざまなクロスオーヴァ・メディアをも内包して、ますます巨大にふくれあがる情報体<テクストラ・テレストリアル>が、もし万一「サイバーパンク・ジャパン」について語りだしたとしたら、それこそ正に<マトリックス>の神経症、すなわち<ニューロマンサー>より他にないだろう。われわれは今、期待不安のように、孝之のその発病を待っているのである。
野阿梓『SF-Eye JAPAN』05/1989
*こちらの書評はウェブで全文お読みいただけます。

SF界の動向や作品の紹介に、インタビューや会見記あるいは著者自身のサイバーパンクへの参加記録なども適宜盛りこみ、この流行現象の表舞台と楽屋裏を興味津々に綴ってみせる。ジャーナリスト巽孝之の面目躍如といったところだ。なによりも、気楽に読めるアメリカ80年代SFグラフィティとして歓迎したい。
牧眞司『週刊読書人』01/30/1989

特にインタビューというにはあまりにも著者の姿勢は“構成的”なものであって、対話はおうおうにしてスリリングな“誘導尋問”の様相を示す。「運動」の作家や編集者たちもいずれ劣らぬ論客ばかりなので、彼らの撃ち出す「手」もまた楽しめる。サイバーパンクの現状追認をはからずも逸脱してしまったいくつかのパッセージ、そこにこの本のいまひとつの魅力がある。
上野俊哉『図書新聞』03/04/1989

もちろん、数々の邦訳も書店に並んではいる。しかし一大ムーブメントのわりには、その出生の地である米SF界で何が起きているのか、いまひとつ見えないまま、ここまで来てしまった感が強かったのだが、ようやく生々しい現場レポートとでも言うべき好著が出た。
松沢呉一『Crossbeat』04/1989

サイバーパンクというムーブメントがSF界から拡大していく現在、その発生らの過程を至近距離で観察しつづけた著者。彼がW・ギブスン、B・スターリングなどサイバーパンク作家や運動に貢献した雑誌編集者や批評家たちとのインタビューを通じてその現代的な感覚美学を描写する。
無署名『Brutus』 04/01/1989

本書はこの10年来、W・ギブスンやB・スターリングらを中心に、そんなお上品なSFに鋭くノンをつきつけているサイバー・パンク・ムーヴメントを、作家たちへのインタビューをまじえつつ走査する。
無署名『Elle Japon』 02/20/1989

海外でも紹介されました!
My friend Takayuki Tatsumi, who published an essay on Delany in this journal in 1987 and who studied with Delany at Cornell, has sent me a copy of his book Cyberpunk America published by Keiso Books in 1988. I would review it except that I don't read Japanese, and we seldom review books in languages other than English. Viewing the pictures, though, I can tell that Tatsumi writes about Delany, William Gibson, Bruce Sterling, and others, including David Hartwell. In other words, the enterprise of science fiction is multiplex and includes many signs and individuals that we cannot yet read.
Donald Hassler Extrapolation Spring 1990

The whole SF community of Japan now seems to be waiting for Takayuki Tatsumi's next move, one that is already half-promised to be a bigger success.
Goro Masaki Science Fiction Eye 03/1990

A 310 page hardcover, it's a critical analysis of this oft-discussed "movement," focusing on the principal writers associated with it, including several critics, such as Larry McCaffery, who directed the 1986 SFRA Conference in San Diego. The book received the 1988 American Studies Book Prize sponsored by the Japan-U.S. Friendship Commission, which is chaired by Glenn Campbell, director of Stanford's Hoover Institution.
Neil Barron SFRA Newsletter June 1989


【特別掲載:日米友好基金賞受賞記事】



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