本論文は、歴史的転換点において物語が発生する瞬間——文学と歴史が交錯する瞬間——を出発点としつつ、福澤諭吉の戊辰戦争時におけるウェーランド経済書講述の逸話から、ハーバート・スペンサーの社会進化論の日本受容、そしてトマス・サージェント・ペリーの日本来日、慶應義塾大学英文学史教授就任の顛末を詳述されながら、ペリーの「タイミングの悪さ」、「何者にも影響を与えないこと」による文学的影響とその遺産を浮き彫りにされます。また、本誌にはシンポジウム当日に交わされた質疑応答も収録されています。
加えて、本誌には大学院在籍の榎本悠希さんによる論文「「放浪する者たちの一時的な避難場所」——『ヴァインランド」における記録されざる声と土地の連帯」も掲載されています。トマス・ピンチョンの第四小説『ヴァインランド』を対象に、“temporary solidarity of the land”とその可能性を照射します。ご関心のある方は、ぜひご一読ください!
『藝文研究』
第 120号(2021年)
※『藝文研究』詳細は藝文学会 HPをご参照ください。
【目次】
- 戦国軍記の生成と展開に関する一考察—— 『足利季世記』と『別本細川両家記』 小秋元三八人
- 毛宗商本『三国志演義』における魏の降将——関羽との関わりから見る腫・徐晃・鹿徳について 鵜浦恵
彙報
2020年度藝文学会シンポジウム 文学と歴史
- 近代フランス文学と歴史の表象 小倉孝誠
- 質疑 小平麻衣子、吉永壮介
- モダニズム前史またはトマス・サージェント・ペリーの場合 巽孝之
- 質疑 小平麻衣子、吉永壮介
- 応答 小倉孝誠、巽孝之
- 大垣方言における用言の形態音韻論的分析——音便形と補助用言のアクセントを中心に 吉安良太
- ゴンクール賞と作家の栄光——マルセル・プルーストと『NRF』誌の関係をめぐって 大嶌建太郎
- ポール・ヌジェの企図における「失敗」の位置 ヴアンサン・ブランクール
- クリステイアン・アウグスト・ヴルピウス『シドニア・フォン・ボルケ』における文学形式と魔女像 フォン・ボルケ・亜弓
- 『農夫ピアズ』(Cテクスト)における主題成句・分割・例話:Passus1 81-203とX.20-55 西川雄太
- 古英詩『ベーオウルフ』における定動詞の韻律的配置 李華雨
- 「放浪する者たちの一時的な避難場所」——『ヴアインランド」における記録されざる声と土地の連帯 榎本悠希
【関連リンク】
- 藝文学会
- 12/11: 藝文学会シンポジウム「文学と歴史」/巽先生がご登壇なさいます!(CPA: 2020/12/02)
- 大学院学位論文リスト