長澤唯史先生(椙山女学園大学)による『70年代ロックとアメリカの風景——音楽で闘うということ』(小鳥遊書房)が絶賛刊行中です!
本書は二部構成の全十四章、政治の 60年代〜商業主義の 70年代という既存の図式に対し、両時代を通じて響きあう主題を探られます。第一部「70年代ロックの闘い」はイギリスに、第二部「アメリカ音楽の闘い」はアメリカに焦点をあて、それぞれのアーティストの構築性への意識を照射し、ロックの「浸透と拡散」を各々の方法と場に根差した「闘い」として炙り出されます(扱われるアーティストは下記目次をご覧ください!)。文学、哲学、思想、歴史学、音楽、映像をまたぐ領域横断的な思考を通じ(例えば、第5章「ジェフ・ベックとギターヒーローの文化史、あるいはギターというメディア」)、エンターテインメント性と政治性の結節点を浮かびあがらせます。
前半と後半のあいだに挿入されたコラム「倒錯という戦略——ブラック・サバスと H・P・ラヴクラフト」は、ヘヴィーメタルとラヴクラフトのえも言われぬ結びつきを不穏でおぞましい表層の装飾的過剰性に見出し、「倒錯の戦略」として教えてくださいます。また、各章扉絵における長澤先生と横山ミィ子氏による挿絵の絶妙なセッションも魅力的な読み(見)処。ご関心のある方は、ぜひご一読ください!
『 70年代ロックとアメリカの風景——音楽で闘うということ』
ISBN: 9784909812483
【目次】
序 音楽で闘うということ
第 Ⅰ部 70年代ロックの闘い——思想・文化・政治
- 第1章 ポストモダン・クリムゾン——アイデンティティ構築、ロック、SF
- 第2章 ハイパーリアル・イエス——起源なき反復の体現者
- 第3章 荒地に響くマザー・グースの歌——英文学的ジェネシス論
- 第4章 「新たなエルサレム」の夢——EL&Pとポストモダン的崇高
- 第5章 ジェフ・ベックとギターヒーローの文化史、あるいはギターというメディア
- 第6章 ロックスターでありつづける困難と覚悟——マーク・ボランと 70年代ロック
- 第7章 ピート・タウンゼンドの〈ユメ〉と〈ウソ〉——メタフィクションとしての『四重人格』
【コラム】 倒錯という戦略——ブラック・サバスとH・P・ラヴクラフト
第 Ⅱ部 アメリカ音楽の闘い——人種・歴史・空間
- 第8章 不幸な変り者の系譜——ボブ・ディランとアメリカ詩の伝統
- 第9章 LA/アメリカを演じつづけること——イーグルスとアメリカン・アイデンティティ
- 第10章 「普遍の調べ」を追いつづけて——カルロス・サンタナのアイデンティティと音楽
- 第11章 クロスタウン・トラフィックの結節点ーージミ・ヘンドリックスを生んだ歴史と空間
- 第12章 女々しくて辛い場所に辿り着いたアイドル——マーヴィン・ゲイと 60年代の感情革命
- 第13章 ケンドリック・ラマーと内省のアメリカ文学
- 第14章 ウッドストック、ロックとカウンターカルチャー——再考と再評価の試み
あとがき 70年代ロックとアメリカ音楽の「闘い」
初出一覧
参考文献
索引
【関連リンク】
- 小鳥遊書房
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- 『オックスフォード版文学研究百科』巽先生の “U.S.-Japan Literary Interactions in the Transpacific Cultural History” が更新されました!(長澤先生による “The Reception of American Science Fiction in Japan” 収録/ CPA: 2017/06/20)
- ヴォネガットの遺作『国のない男』文庫版と、文藝別冊KAWADE夢ムック『サンタナ』が絶賛刊行中!(長澤先生による「「普遍の調べ」を追い続けて−−カルロス・サンタナのアイデンティティと音楽」収録/ CPA: 2017/03/26)
- 『文藝別冊 キング・クリムゾン 二十一世紀的異常音楽の宮殿』刊行!(長澤先生による「ポストモダン・クリムゾン—アイデンティティ構築とロック」収録/ CPA: 2015/08/07)
- 彩流社より『トマス・ピンチョン (現代作家ガイド)』刊行!巽先生と大串先生が寄稿されています!(「ピンチョンのポストモダニズム」(ブライアン・マクヘイル/長澤先生訳)収録/ CPA: 2014/07/06)