新紀元社より刊行中の『幻想と怪奇5 アメリカン・ゴシック——E・A・ポーをめぐる二百年』は、エドガー・アラン・ポーを主軸にすえ、約二百年にわたる「アメリカ怪奇幻想史」を陰に陽に浮き彫りにしていきます。
その約二百年の射程は、ポー以前の作品を扱うセクション「新世界の夜陰に」——ブラウン「夢遊病」 / アーヴィング「スリーピー・ホロウの伝説」 / ホーソーン「白の老嬢」——から、ポーの傑作短篇「ベレニス」「早すぎる埋葬」「ヴァルドマール氏の死の真相」+評論(二篇)を経て、ポー以後においては十九世紀後半〜二十世紀前半発表の英語作品を「アーバン・ゴシック」(三篇)「ストレンジ・カントリーズ」(三篇)として辿り、日本現代作家によるショート・ショート(二篇)を経由し、英語のポー・オマージュ作品(三篇)を収録する最終セクション「ポーの長い影」へと至ります。新訳含む全十九篇(内、評論二篇)、読み応えたっぷりの超豪華アンソロジーです!巻末には「<アメリカン・ゴシック>関連著作年譜――セイラム魔女裁判からラヴクラフトの歿年まで」も掲載されています。
巽先生による巻頭エッセイ「アメリカン・ゴシックの瞬間」は、遺産管理人-兼-詩人-兼-編集者ルーファス・グリズォルドによるポーへの「復讐」を皮切りに、ポーの世界文学的影響力を概観しつつ、その背後に潜むアメリカン・ゴシックの仄暗い遺産を詳らかにしてくださいます。また、オーガスト・ダーレスの手によるポーとラヴクラフトの夢想の対話を描いた「深夜の邂逅」が、荒俣宏氏による翻訳(『リトル・ウィアード』創刊号 1966年版より自筆原稿!)で掲載されています。ご関心のある方は、ぜひお手にとってみてください!
A5、296ページ
表紙:ひらいたかこ(Pen Studio)
装丁:YOUCHAN(トゴルアートワークス)
題字(幻想と怪奇):原田治
新紀元社、2021年 2月 17日刊行
本体 2,200円(税別)
ISBN: 978-4-7753-1896-6
【目次】
- 〈幻想と怪奇〉アートギャラリー アーサー・ラッカム
- A Map of Nowhere05: ダーレス「深夜の邂逅」のプロヴィデンス 藤原ヨウコウ
- 深夜の邂逅(『Little Weird 1』より) オーガスト・ダーレス 荒俣宏 訳
- 《巻頭エッセイ》アメリカン・ゴシックの瞬間 巽 孝之
新世界の夜陰に
- 夢遊病――ある断章 チャールズ・ブロックデン・ブラウン 夏来健次 訳
- スリーピー・ホロウの伝説(新訳) ワシントン・アーヴィング 森沢くみ子 訳
- 白の老嬢(新訳) ナサニエル・ホーソーン 田村美佐子 訳
ポーと名乗った男
- ベレニス エドガー・アラン・ポー 安原和見 訳
- 早すぎる埋葬 エドガー・アラン・ポー 野村芳夫 訳
- ヴァルドマール氏の死の真相 エドガー・アラン・ポー 西崎憲 訳
《評論》
- 怪奇幻想小説の伝統(再録) 西崎憲
- 色彩の悪夢――エドガー・アラン・ポーと疫病ゴシック 西山智則
アーバン・ゴシック
- 七番街の錬金術師 フィッツ=ジェイムズ・オブライエン 岩田佳代子 訳
- 姿見 イーディス・ウォートン 高澤真弓 訳
- サテンの仮面 オーガスト・ダーレス 三浦玲子 訳
ストレンジ・カントリーズ
- 藤の大木(新訳) シャーロット・パーキンス・ギルマン 和爾桃子 訳
- 夢 アースキン・コールドウェル 髙橋まり子 訳
- クロウ先生の眼鏡 デイヴィス・グラッブ 宮﨑真紀 訳
《ショートショート》
- ホーンテッド・パレス 井上雅彦
- 死を許せなかった男 奥田哲也
ポーの長い影
- 月のさやけき夜 マンリー・ウェイド・ウェルマン 紀田順一郎 訳
- 屑拾い メラニー・テム 圷香織 訳
- テクニカラー ジョン・ランガン 植草昌実 訳
〈アメリカン・ゴシック〉関連著作年譜――セイラム魔女裁判からラヴクラフトの歿年まで
- 《Le forum du Roman Fantastique》小泉八雲『怪談』をめぐって 杉山淳
- Reader’s Review
- 書評
- What was it?
- 寄稿者一覧
- not exactly editor
【関連リンク】
- 新紀元社
- リーハイ大学出版より Anthologizing Poe: Editions, Translations, and (Trans)National Canons が刊行され、巽先生のご論文 “Editing and Anthologizing Poe in Japan”が寄稿されています!(CPA: 2020/12/10)
- CPA Monthly #33 「地中海に捧ぐ――第二回スペイン・ポー学会国際会議記録――」(2020/03/04)
- リーハイ大学出版よりTranslated Poe が刊行!巽先生のご論文 "The Double Task of the Translator: Poe and His Japanese Disciples" が寄稿されています!(CPA: 2014/11/12)
【関連書籍】
Anthologizing Poe: Editions, Translations, and (Trans)National Canons, edited by Margarida Vale de Gato and Emron Esplin (Lehigh University Press, 2020)
Translated Poe, edited by Emron Esplin and Margarida Vale de Gato (Lehigh University Press, 2014)
『大渦巻への落下・灯台——ポー短編集 〈3〉 SF&ファンタジー編 』(新潮社、2015年)
『E・A・ポー:ポケットマスターピース 9』鴻巣友季子、桜庭一樹編集、池末陽子編集協力(集英社、2016年 ※巽先生翻訳『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』収録)
『NHKカルチャーラジオ 文学の世界 エドガー・アラン・ポー 文学の冒険家』(NHK出版、2012年)
『エドガー・アラン・ポーの世紀——生誕 200周年記念必携』(研究社、2009年)
『E・A・ポウを読む (岩波セミナーブックス)』(岩波書店、1995年)