2014/07/06

彩流社より『トマス・ピンチョン (現代作家ガイド)』刊行!巽先生と大串先生が寄稿されています!:「パラノイド文学史序説―ディック、ピンチョン、ホフスタッター」「「カワイイ」化する陰謀史観」

今世紀に入り、『逆光』、『LAヴァイス』、そして2013年の新作『ブリーディング・エッジ』と相次いで長篇作品を刊行している作家トマス・ピンチョン!近年では、新潮社より「トマス・ピンチョン全小説」がシリーズ化され、ピンチョンとその作品が、日本の読者にとってもより身近な存在となりつつあります。

こうしたなか、彩流社より刊行された『トマス・ピンチョン(現代作家ガイド)』(麻生享志、木原善彦編著)は、待ちに待たれた最新のピンチョン入門書!謎が謎を呼ぶピンチョン・ワールドへ多角的に切り込みます。冒頭には、ピンチョンによる2本のエッセイ、つづいて、ピンチョン作品を題材とした7本の論文、さらには、日本のピンチョン受容や、ピンチョン・ウィキ、作家のゴシップや論争などについて、11本の解説が収録されています。

巽先生の論文では、歴史家リチャード・ホフスタッターの『アメリカ政治におけるパラノイド・スタイル』を参照されながら、フィリップ・K・ディックとピンチョンの比較を通じ、アメリカ文学史に通底するパラノイド想像力に迫ります。大串先生は、2002年のアニメ映画『TAMALA』において見出せる、ピンチョン的陰謀史観と、日本の「カワイイ文化」との邂逅をご解説。また、大学院ゼミOBの波戸岡景太先生は、経験や学びをめぐるツーリストの論理に言及されながら、ピンチョン作品における小さなささやきをひろい上げられます。

なお、本書は後半に、作品ガイド・批評ガイドも付録されており、これから読もう、研究しようとされている方にとっても非常に有り難い一冊。ご関心のある方は、ぜひご一読ください!


『トマス・ピンチョン (現代作家ガイド)』
編著:麻生享志、木原善彦
判型:A5
頁数:280
出版:彩流社
刊行:2014年6月
価格:2800円 + 税
彩流社によります本書詳細

【目次】
はじめに(木原善彦)
トマス・ピンチョン/基本情報
トマス・ピンチョン/スターターキット(麻生享志)

ピンチョンが語る Thomas Pynshon Speaks! ――エッセイ二編
ドナルド・バーセルミ『ドン・Bの教え』への序文(麻生享志・三浦玲一訳)
ジム・ダッジ『ストーン・ジャンクション』への序文(木原善彦訳)

ピンチョンを語ろう Talking About Thomas Pynchon
総論 ピンチョンのポストモダニズム(ブライアン・マクヘイル/長澤唯史訳)
起源 理性と狂気――歴史的メタフィクションとしての『メイスン&ディクスン』(麻生享志)
展開 ツーリストの論理――学び、地図、強制収容所跡(波戸岡景太)
表現 ピンチョン節とは何か?――文体的特徴について(木原善彦)
本質 探偵と電球――「見ること」の変態(石割隆喜)
再構築 ピンチョンにみるポストモダン小説の変遷――『ヴァインランド』の必然(三浦玲一)
継承 パラノイド文学史序説――ディック、ピンチョン、ホフスタッター(巽孝之)

増幅するピンチョン・ワールド Multiple World of Thomas Pynchon
日本におけるピンチョン受容(麻生享志)
ピンチョンマニアが集う場所(三浦玲一)
貴重な草稿(麻生享志)
ゴシップ、そして論争(木原善彦)
作家の素顔を探る旅(木原善彦)
ピンチョン談話(石割隆喜)
明かされた人生(木原善彦)
ビジュアル版『重力の虹』(波戸岡景太)
聖地をめぐる物語(石割隆喜)
「カワイイ」化する陰謀史観(大串尚代)
ヘンリー・ミラーとの邂逅?(波戸岡景太)

ピンチョン作品ガイド Synopses of Thomas Pynchon's Books
『V. 』
『競売ナンバー49の叫び』
『重力の虹』
『スロー・ラーナー』
『ヴァインランド』
『メイスン&ディクスン』
『逆光』
『LAヴァイス』
『ブリーディング・エッジ』

ピンチョン批評ガイド
これだけは読んでおきたい特選10冊(麻生享志)

あとがき
トマス・ピンチョン主要文献

【関連リンク】

【関連書籍】
トマス・ピンチョン著、志村正雄訳、巽先生解説『競売ナンバー49の叫び (ちくま文庫)』(筑摩書房、2010年)


巽孝之著『メタフィクションの思想 (ちくま学芸文庫)』(初版1993年:筑摩書房、2001年)

麻生享志著『ポストモダンとアメリカ文化: 文化の翻訳に向けて』(彩流社、2011年)


波戸岡景太著『ピンチョンの動物園 (エコクリティシズム・コレクション)』(水声社、2011年)