2017/01/03

『現代思想 特集=トランプ以後の世界』(2017年 1月号)に、巽先生の論文「パラノイアの帝国−−テイラー、ゴールドウォーター、トランプ」が寄せられています!

2016年 12月 11日(日)の『朝日新聞』には、巽先生による「(ひもとく)アメリカの権力と文学 政治的危機がもたらす傑作」が寄稿されており、そこではバーバラ・W・タックマン『愚行の世界史』、フィリップ・ロス『プロット・アゲインスト・アメリカ』、ロベルト・ポラーニョ『2666』が挙げられていました(※ Book asahi.com で全文お読み頂けます!)

本論考を拡大させた形で、『現代思想 特集=トランプ以後の世界』(2017年 1月号)には、「パラノイアの帝国−−テイラー、ゴールドウォーター、トランプ」が寄せられています!本稿では、『リンカーンの世紀』で探究された第 16代大統領リンカーンと第 35代大統領ケネディを貫く「銃弾」の構想を起点にしつつ、19世紀とりわけ第 12代大統領ザカリー・テイラーから、20世紀の敗北した大統領候補バリー・ゴールドウォーターを貫くアメリカ共和党の歴史を第 45代大統領ドナルド・トランプの先史および「愚行史」として立ち上げた上で、それと奇しくも同時に、19世紀アメリカン・ルネッサンスの文学や 20世紀ポスト・モダニズムの文学、21世紀ボーダータウン・ナラティヴが生み出されてきた歴史をも浮上させています。

他にも、文科省科研費研究「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」の共同研究者で CPAでも紹介した『モンロー・ドクトリンの半球分割−−トランスナショナル時代の地政学』(彩流社、2016年)編著者の下河辺美知子先生による「投票ブースの中で起こったこと」、および同著寄稿者の新田啓子先生による「「わたしは予期していた」」も収録されています。なにとぞお見逃しなく!



『現代思想 特集=トランプ以後の世界』
2017年 1月号(第 45巻 第 1号)
青土社
本体 1400円+税
2016年 12月 27日

【目次】
連載
  • 分解の哲学 第 8回 屑拾いのマリア(1)/藤原辰史
  • ボブ・ディランが歌うアメリカ 第 14回 連鎖する超現実主義(シュールレアリスム)のブルース/マニュエル・ヤン
  • 科学者の散歩道 第 34回 学校教育界と学問研究界/佐藤文隆
  • 家族・性・市場 第 129回 『相模原障害者殺傷事件』補遺/立岩真也

特集 トランプ以後の世界
インタビュー
ホワイトハウスのトランプ/N・チョムスキー、聞き手:C・J・ポリクロニウ
「アメリカの世紀」の終わり/西谷 修

討議
バーニー・サンダース、スパイク・リーに会う/E・ブロックス

トランプ以後
アメリカにおける新自由主義の終焉と新しい時代の到来/C・ウェスト
革命はこれからだ/ゾンビ/M・デイヴィス
トランプに立ち向かう運動の力 /M・ハート、S・メッザードラ

反復する愚行
究極の集団化への欲動/森 達也
トランプウマ、またはトランプ狂想/亀山郁夫
パラノイアの帝国/巽孝之
トランプと人種差別/都甲幸治

拒絶/分断
拒絶の政治学/V・プラシャド
アメリカという理想/アメリカという悪夢/岡野八代
大いなる矛盾の導く先は?/北丸雄二

トランピストとは誰か
投票ブースの中で起こったこと/下河辺美知子
トランプ・ショック、あるいは「主体性ある女性保守」の反乱/海妻径子
「赤い州」モンタナから見た米大統領選/山口智美

人種/差別
アメリカ例外主義の終焉と黒人のまなざし/藤永康政
「わたしは予期していた」/新田啓子
「ポスト真実」社会と先住民族/M・ウィンチェスター

ポピュリズム
ポピュリズムの政治思想的文脈/森 政稔
It’s the Populism, Stupid!/山本 圭
システム危機の表象としてのスペクター(右翼ポピュリズム)/土佐弘之

何が変わるのか
トランプとオバマケアのゆくえ/佐藤千登勢
予測不可能のトランプ次期政権の登場に揺れる中東/臼杵 陽

その先の世界へ
「時代遅れ」のコンセンサス/木下ちがや
「トランプ=安倍枢軸」下の危機とたたかいの展望/栗田禎子
「トランプ以後の世界」におけるオルタナティヴのために/大井赤亥
「壁」をこえて/若林千代

研究手帖 涙の粒 緑の光/小森はるか


【関連リンク】


【関連書籍】
巽孝之『リンカーンの世紀−−アメリカ大統領たちの文学思想史』(青土社、2002年;増補新版、2013 年)


下河辺美知子編著『モンロー・ドクトリンの半球分割−−トランスナショナル時代の地政学』(彩流社、2016年)


バーバラ・W・タックマン、大社淑子訳『愚行の世界史(上)』(中央公論新社、2009年)


バーバラ・W・タックマン、大社淑子訳『愚行の世界史(下) 』(中央公論新社、2009年)


Philip Roth, The Plot Against America (2004; Vintage, 2005)


ロベルト ボラーニョ、野谷文昭、内田兆史、 久野量一 訳『2666』(白水社、2012年)