本書には大学院ゼミ OBOGの大和田俊之先生(本塾法学部教授)による「「善き隣人」のリズム−−ラルフ・ピアとラテン音楽、1933〜1945」と、常山菜穂子先生(本塾法学部教授)による「不確かな半球−−世紀転換期ハワイにおける日本人劇場建設とモンロー・ドクトリン」および、巽先生による「モンローは誘惑する−−アメリカ最後の一線」が収録されています。
大和田先生の論文は、アメリカ民謡の商業化に尽力したラルフ・ピアと、中南米諸島の音楽の関係に注目されながら、ピアの戦略と国内受容をフランクリン・デラノ・ローズヴェルト大統領による善隣外交とその文化的影響から分析されます。常山先生の論文は、ハワイで発行された初の本格的日本語新聞『やまと新聞』の記事を通じ、世紀転換期ハワイにおける日本人劇場を、東海岸からの西進だけでなく、日本から太平洋を跨ぐ東進の交差する場として捉え、「アメリカ演劇とは何か」を再考されます。
また、巽先生の論文では、マリリン・モンロー主演『ナイアガラ』(1953)やキャメロン・ディアス主演『悪の法則』(2013)を取り上げながら、米墨戦争およびポルフィリオ・ディアス政権から、第二次世界大戦 / 60年代対抗文化 / NAFTA発効の経緯を参照しつつ、NAFTA以降の 「ボーダータウン・ナラティヴ」に、モンロー・ドクトリンの遠い帰結を見いだします。ご関心のある方は、ぜひご一読ください!
『モンロー・ドクトリンの半球分割−−トランスナショナル時代の地政学』
下河辺 美知子 編著
四六判、307ページ
彩流社、2016年 6月
2,800円 + 税
*彩流社による本書紹介
【目次】
<序にかえて>
モンロー・ドクトリンの半球分割−−
<第一部 西半球への入り口>
- 黒い半球−−『ブレイク』におけるトランスナショナリズム再考(古井義昭)
- ホーソーンとキューバ−−「ラパチーニの娘」、『キューバ・ジャーナル』、『フアニタ』(高尾直知)
- メルヴィルとキューバをめぐる想像力−−「エンカンタダス」と『イスラエル・ポッター』における
海賊 (小椋道晃)
- 「善き隣人」のリズム−−ラルフ・ピアとラテン音楽、1933〜1945(大和田俊之)
- 「長崎の鐘」と(ラテン)アメリカ−−モンロー・ドクトリンの音楽的地政学 (舌津智之)
- 不確かな半球−−世紀転換期ハワイにおける日本人劇場建設とモンロー・ドクトリン(常山菜穂子)
- 航空時代とアフリカ系アメリカ文学の惑星−−ウォルター・ホワイトのアイランド・ホッピング(竹谷悦子)
- 南部の西漸と南進−−ゾラ・ニール・ハーストンのクラッカー表象(新田啓子)
- 近代化された情動−−カルメン・ミランダとレヴューの終焉(日比野啓)
- モンローは誘惑する−−アメリカ最後の一線(巽孝之)
【関連リンク】
- 科学研究費・基盤研究 (B)「マニフェスト・デスティニーの情動的効果と21世紀惑星的想像力」
- 巽先生が最終章を寄稿した『アメリカン・テロル―内なる敵と恐怖の連鎖』が彩流社より来月刊行!(CPA: 2009/05/30)
- 彩流社より刊行された『アメリカン・ヴァイオレンス』に巽先生・大串先生ご寄稿(CPA: 2013/06/17)
- OBOG 学位論文リスト
【関連書籍】
下河辺 美知子 編著 / 巽孝之、大和田俊之、常山菜穂子寄稿 『モンロー・ドクトリンの半球分割−−トランスナショナル時代の地政学』(彩流社、2016年)
下河辺 美知子 編著 / 巽孝之、大和田俊之寄稿『アメリカン・テロル−−内なる敵と恐怖の連鎖』(彩流社、2009年)
下河辺美知子、権田建二 編著 / 巽孝之、大串尚代寄稿『アメリカン・ヴァイオレンス−−見える暴力、見えない暴力』(彩流社、2013年)