2022/06/12

『熊楠研究』最新第 16号が刊行され、巽先生と小谷先生による書評が掲載されています!

『熊楠研究』最新第 16号が刊行され、巽先生と小谷先生による書評が掲載されています!

巽先生による書評は、岩淵幸喜氏の『熊楠と漱石-二人を取り巻く人々』を対象に、本書で注目される夏目漱石と南方熊楠の魅力的なペアに焦点を置きながら、「現代日本の開花」をめぐる両者の意見の差異と、博士号授与を断る振る舞いに見られる両者の共振とから、明治を代表する国民作家と博物学者における互いが互いに反発し合いながらも、ふと袖ふれ合う稀有な瞬間を浮き彫りにされます。

小谷先生による書評は、志村真幸氏の『熊楠と幽霊』を対象に、近代科学を背景としたサイエンティストである熊楠と、幽体離脱や夢によるお告げ、テレパシー、神通力について記述する熊楠、その両者のあいだに横たわるある種の乖離を出発点にしながら、現実と幻想の境界をこえて「不可思議なこと」を解き明かしていこうとする熊楠の姿にあらためて光があてられます。

ご関心のある方は、ぜひご一読ください!



『熊楠研究』
第 16号
A5判、257ページ
2022年 3月刊行
3,300円(別途送料 310円)
※ご購入方法はこちらをご参照ください。

【目次】
Ⅰ 論文・研究ノート
  • 南方熊楠における神社合祀反対運動の終りと「十二支考」の始まり  武内善信
  • 「苦界の正中(くがいのまんなか)」からの跳躍 - アナーバーにおける熊楠の萃点-  小野有五
  • 南方熊楠の睡眠時間と知的活動 -昭和期の日記より-  雲藤等
  • 南方熊楠と植物病理学者伊藤誠哉の微小菌類研究  郷間秀夫
  • 英文論考の草稿の研究-『N&Q』掲載版との比較から  志村真幸

Ⅱ 資料紹介
  • 南方熊楠書簡資料 熊楠蔵書『贈従五位畔田翠山翁伝』の著者山口藤次郎来簡  郷間秀夫・岸本昌也 編
  • 南方熊楠書簡資料 本多季麿来簡(一九三五年-一九三七年)  郷間秀夫 編
  • 南方熊楠英文資料 アメリカ時代の「文明進化論」  松居竜五・志村真幸・プラダン ゴウランガ チャラン 編
  • 南方熊楠英文資料 大英博物館理事会への「陳状書」および関連書簡  松居竜五・志村真幸・プラダン ゴウランガ チャラン 編

Ⅲ 書評
  • 岩淵幸喜『熊楠と漱石-二人を取り巻く人々』  巽孝之
  • 安藤礼二『熊楠ー生命と霊性』  一條宣好
  • 志村真幸『熊楠と幽霊』  小谷真理
  • 小田龍哉『ニニフニ -南方熊楠と土宜法龍の複数論理思考』  辻晶子
  • 高陽『説話の東アジア -『今昔物語集』を中心に』  金文京

【関連リンク】

【関連書籍】
『三田文学』(2008年夏季号;巽先生による「シャーロック・ホームズの街で―小泉信三、南方熊楠、巽孝之丞」収録)



『三田評論』(2012年 7月号;巽先生・新倉先生・林先生による鼎談「留学生のみた倫敦―漱石・信三・順三郎」収録)

塩田弘、松永京子、浅井千晶、伊藤詔子、大野美砂、上岡克己、藤江啓子編『エコクリティシズムの波を超えて−−人新世の地球を生きる』(音羽書房鶴見書店、2017年;巽先生による「聖樹伝説−−ヨセミテの杜、熊野の杜」収録)

『三田文學』(2018年秋季号;巽先生による「横浜正金銀行の文学史――漱石、荷風、米次郎」収録)