この度、水声社より刊行された『ジュール・ヴェルヌとフィクションの冒険者たち』は、2017年 10月の日本ジュール・ヴェルヌ研究会主催シンポジウム「ジュール・ヴェルヌ再発見——作家と大衆作家」を契機に編まれた一冊(CPA詳細はこちら)。ヴェルヌが耽溺した作家、ヴェルヌに耽溺した/しなかった作家等を巡り、ヴェルヌの生まれ生きたフランス(デュマ、プルースト、ルーセル)にとどまらず、ドイツ(ホフマン、ラスヴィッツ)、イギリス(ドイル)、アメリカ(ポー)、ポーランド(レム)、日本(音二郎)をふくむ幅広の視座から、ヴェルヌ文学の魅力をそのジャンル性ないし科学/幻想/大衆娯楽性も焦点にあらためて浮かびあがらせます。
巽先生によるご論文「空洞地球再訪――ポー、ヴェルヌ、ブラッドベリ」は、ポーの『ナンタケット島のアーサー・ゴードン・ピムの冒険』および未完の「灯台」を主軸に同時代擬似科学としての地球空洞説および古生物学も参照されながら、空洞地球文学をめぐる魅惑の系譜が照射されます(ポー受容史、および地底世界の多様な有様もお教えくださいます)。なお、巻末には、付録として「<驚異の旅>作品一覧」が収録されるほか、図像も豊富な一冊です。ご関心のある方は、ぜひご一読ください!
『ジュール・ヴェルヌとフィクションの冒険者たち』
編集:新島進
四六判上製、306頁
装幀:宗利淳一
水声社、2021年 3月
3000円+税
ISBN:978-4-8010-0554-9 C0098
【目次】
- まえがき 私市保彦
- 物質主義の矯正装置としての幻想——ヴェルヌとホフマン フォルカー・デース
- 或る復讐譚の変奏——『モンテ゠クリスト伯爵』から『シャーンドル・マーチャーシュ』へ 三枝大修
- 「生成のブロック」としての「演奏目録」——ヴェルヌとプルースト 荒原邦博
- 師弟の邂逅——ヴェルヌとルーセル 新島進
- 〈ドイツのヴェルヌ〉と呼ばれたくなかった男——ヴェルヌとラスヴィッツ 識名章喜
- ロビンソン的独我論の爆破——ヴェルヌとコナン・ドイル 石橋正孝
- 空洞地球再訪——ポー,ヴェルヌ,ブラッドベリ 巽孝之
- ジュール・ヴェルヌはなぜ「SFの父」と呼ばれるのか?——ヴェルヌとレム 島村山寝
- 密使の系譜——日本近代演劇史に絡むジュール・ヴェルヌ『ミハイル・ストロゴフ』をめぐって 藤元直樹
- 【付録】〈驚異の旅〉作品一覧
- あとがき 新島進
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