先生による特別寄稿「アウーダのために―『八十日間世界一周』の文学思想史序説」では、1962年の野田開作氏翻案による『八十日間世界一周』との出会いを振り返りつつ、本作で描かれる「サティ」に注目されます。イギリス紳士フォッグが、インドの美しき寡婦アウーダをサティの儀式から救出する場面に着目し、ここに見られる、帝国主義/植民地主義における支配と解放のアイロニーを指摘されながら、『サバルタンは語ることができるか?』で知られるガヤトリ・スピヴァクが、ポストコロニアリズムの言説空間を開拓する際に抱えていた矛盾をも浮きぼりにされます。ご関心のある方は、ぜひお手に取ってみてください!
Excelsior!
A5 / 310pp
発行人: 石橋正孝
編集: 石橋正孝、中村健太郎
装丁: 小沼宏之
校正協力: 櫛木千尋・倉方健作・島村山寝・新島進・藤元直樹
2015年11月 / 1500円(10周年記念号特別価格)
*日本ジュール・ヴェルヌ研究会による本誌紹介
【目次】
日本ジュール・ヴェルヌ研究会の十周年に寄せて
特集:八十日間世界一周
- 特別寄稿:アウーダのために――『八十日間世界一周』の文学思想史序説(巽孝之)
- 読書会『八十日間世界一周』
- エドゥアール・カドル――ある「一発屋」の肖像(倉方健作)
- 『八十日間世界一周』に魅了されて(戸越隆之)
- 『八十日間世界一周』(創元SF文庫・田辺貞之助訳)に出てくる宝石たち(戸倉博之)
- ワンスアポンな横浜ミステリー(ドクター夢ッ破)
- ジュール・ヴェルヌと小説における時空間イメージ試論(島村山寝)
- プルーストと『八十日間世界一周』――あるいは「四八時間世界一周」としての『失われた時を求めて』(荒原邦博)
- 演劇の開化とジュール・ヴェルヌ――川島忠之助・依田学海・川上音二郎の系譜、そして長田秋濤の影(藤元直樹)
特集2:小説以外のジュール・ヴェルヌ
- 本邦初訳:ジュール・ヴェルヌ『折られた麦わら』 (櫛木千尋 訳/ 石橋正孝 解題)
- 再録:ヴェルヌ「青少年時代の思い出」とヴェルヌ伝説(私市保彦 訳・解説)
自由投稿
- ヴェルヌと鉱物――神秘の島編(長田直華)
- 黄昏の邂逅(島村山寝)
連載
- 六助とソランジュの「魅惑のヴェルヌ」 いかにして、われわれは〈驚異の旅〉日本語版を実現させるか? 第五回『セザール・カスカベル』と『フランスへの道』(ソランジュと六助)
特集3:<驚異の旅>全リスト
入会案内・活動報告
編集後記
【関連リンク】
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