本特集は、ジェフリー・アングルス氏の巻頭詩「内陸に」と巽先生の序文で始まり、先日の日本アメリカ文学会東京支部 4月例会で行われた作家・赤坂真理氏による講演「物語国家 アメリカと日本と私」、および第 10回国際ハーマン・メルヴィル会議で初披露された劇作家・坂手洋二氏による「T 病院事務局長の証言(『バートルビーズ』序章)」を掲載!前者には越智博美先生(一橋大学)が、後者には大学院 OBの田ノ口正悟さんが、それぞれ解説を寄稿されています!
その他、六つの論考が収録。吉田恭子先生による「ディスオリエンタリズム――偽アメリカ作家の告白」は、「英語」で小説を書くことや、「ディスオリエント世界」の創造に至る経緯が綴られます。また、大学院在籍の細野香里さんと冨塚亮平さんが翻訳を担当されたファリード・ベン=ユーセフ氏による「トランプ政権下のボーダー・ナラティヴ」は、米墨国境を描く映画作品を取り上げボーダー・ナラティヴの光と影を鋭利に切りとります。加えて、大学院 OGで本塾文学部助教の加藤有佳織先生による「強制収容ふたたび――『二十一世紀のマンザナー』と『草花とよばれた少女』における先住民像について」は、両作における日系人と先住民の交錯を読み解きます。
特集以外においても、井上逸兵先生の「スマホの中の人類」(随筆)、はるいち氏の「柔らかい針 掌編」(復活 学生創作セレクション 1, 巽先生解説)、山本晶先生の「猫と犬、美女と谷崎潤一郎――新書簡三通をめぐって」(評論)、河内恵子先生の「梯久美子『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』」(書評)がお読み頂けます。
ぜひご一読ください!
『三田文學』
No.130( 2017年夏季号)
三田文学会
2017年 7月 10日
定価 980円(税込)
*詳細およびご購入は三田文学会 HPをご覧ください。
【目次】
特集 アメリカの光と影
- 巻頭詩:内陸に ジェフリー・アングルス
- 序 巽孝之
- 講演:物語国家 アメリカと日本と私 赤坂真理
- [解説] わたしたちは物語とともに生きている、あるいは物語を生きている 越智博美
- 創作:T病院事務局長の証言(『バートルビーズ』序章) 坂手洋二
- [解説] バートルビーたちの記憶――メルヴィルと坂手洋二 田ノ口正悟
- アメリカの波打際で――W.W. への手紙 今福龍太
- 相剋と力 宮内悠介
- ディスオリエンタリズム――偽アメリカ作家の告白 吉田恭子
- つた つた つた 折口信夫と日夏耿之介との越境的ゴシシズムに就て ピーター・バナード
- トランプ政権下のボーダー・ナラティヴ ファリード・ベン=ユーセフ(訳:細野香里、冨塚亮平)
- 強制収容ふたたび――『二十一世紀のマンザナー』と『草花とよばれた少女』における先住民像について 加藤有佳織
随筆
- スマホの中の人類 井上逸兵
- 札の辻より 遠藤一正
- 佐藤春夫と熊野――「詩境」ゆかし潟を訪ねて 林浩平
- 抒情と構造による詩の時空の一瞬、清岡卓行の詩的世界 岡本勝人
復活 学生創作セレクション 1
- 柔らかい針 掌編 はるいち
- [解説] ダイヤモンドの原石 巽孝之
小説
- 僻説俗論へきせつぞくろん 明治十年が如く 青木淳悟
- 扉の向こう側の少女 古屋健三
- 紙ヒコーキ 荻原美和子
- 志賀先生 大嶋岳夫
詩
- 夢-行旅死亡機械 小林坩堝
評論
- 猫と犬、美女と谷崎潤一郎――新書簡三通をめぐって 山本晶
短歌/随筆
- 短歌原論を夢見て[五] 岡井隆
- 千年を隔てた恋の歌のやりとり[第五回] 水原紫苑
俳句/随筆
- 死季折々[第四回] 髙柳克弘
書評
- 桐野夏生『夜の谷を行く』 小平麻衣子
- 福島直哉『わたしとあなたで世界をやめてしまったこと』 杉本徹
- 加藤宗哉『吉行淳之介 抽象の閃き』 黒川英市
- 梯久美子『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』 河内恵子
連載
- ジャック・デリダの思い出 [二] 浅利誠
- [後期未翻訳テクスト]ロデーズの新たなテクスト[第三回] アントナン・アルトー(訳:熊木淳)
- ラカンと女たち [Ⅴ] 立木康介
- やんばるの深き森と海より[第三回] 目取真俊
その他詳細は三田文學 HPをご覧ください。
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