本書『実験する小説たち−−物語るとは別の仕方で』は、全 18章構成。ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』(1922)から、ナボコフ、カルヴィーノ、ダニエレブスキー、円城塔、アリ・スミス『両方になる』(2014)に至るまで、年代順に全 18作品の「実験小説」が取り上げられています。
各章冒頭には紹介作家の簡単なバイオが、各章末の「こちらもオススメ!」欄には各章紹介作品と同種の実験的趣向をこらした諸作品が紹介されています。また、3つ設けられた「休憩」欄では、「タイトルが(内容も)面白い小説」「小説以外の作品」、本書で紹介しきれなかった「個性際立つ実験小説」が拾われています。巻末には「附録:さらに知りたい人のために」(参考文献)も収録。多種多様な「実験」の諸相を学べるとともに、図版も豊富に掲載されていて、読んでてとても楽しい一冊です。ご関心のある方は、ぜひお手にとってみてください!
『実験する小説たち−−物語るとは別の仕方で』
Experimental Fiction: Otherwise than Narrating
木原善彦
帯文:巽孝之(慶應義塾大学教授)、浜村和孝(梅田 蔦屋書店 文学コンシェルジュ)
四六 / 263ページ / 並製
彩流社 / 2,200円 + 税 / 2017年 1月
※彩流社による本書紹介
【目次】
はじめに
- 実験小説とは
- 現代文学の起点:ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』(1922)
- 詩+註釈=小説:ウラジーミル・ナボコフ『青白い炎』(1962)
- どの順番に読むか?:フリオ・コルタサル『石蹴り遊び』(1963)
- 文字の迷宮:ウォルター・アビッシュ『アルファベット式のアフリカ』(1974)
- ト書きのない戯曲:ウィリアム・ギャディス『JR』(1975)
- 2人称の小説:イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』(1979)
- 事典からあふれる幻想:ミロラド・パヴィチ『ハザール事典』(1984)
- 実験小説に見えない実験小説:ハリー・マシューズ『シガレット』(1987)
- 脚注の付いた超スローモーション小説:ニコルソン・ベイカー『中二階』(1988)
- 逆語り小説:マーティン・エイミス『時の矢』(1991)
- 独り言の群れ:エヴァン・ダーラ『失われたスクラップブック』(1995)
- 幽霊屋敷の探検記?:マーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の家』(2000)
- これは小説か?:デイヴィッド・マークソン『これは小説ではない』(2001)
- サンドイッチ構造:デイヴィッド・ミッチェル『クラウド・アトラス』(2004)
- ビジュアル・ライティング:ジョナサン・サフラン・フォア『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(2005)
- 疑似小説執筆プログラム:円城塔『これはペンです』(2011)
- どちらから読むか?:アリ・スミス『両方になる』(2014)
あとがき
【関連リンク】
- 彩流社
- 彩流社より『トマス・ピンチョン (現代作家ガイド)』(麻生享志、木原善彦編著)刊行!(CPA: 2014/07/06)
【関連書籍】
木原善彦『実験する小説たち−−物語るとは別の仕方で』
麻生享志、木原善彦編著『トマス・ピンチョン (現代作家ガイド)』
木原善彦『UFOとポストモダン (平凡社新書)』
木原善彦『ピンチョンの『逆光』を読む−−空間と時間、光と闇』
W・ギャディス、木原善彦訳『カーペンターズ・ゴシック』

トマス・ピンチョン、木原善彦訳『逆光 〈上〉 (トマス・ピンチョン全小説)』(新潮社、2010年)
トマス・ピンチョン、木原善彦訳『逆光 〈下〉 (トマス・ピンチョン全小説)』(新潮社、2010年)
デイヴィッド・マークソン、木原善彦訳『これは小説ではない (フィクションの楽しみ)』(水声社、2013年)
リチャード・パワーズ、木原善彦訳『幸福の遺伝子』(新潮社、2013年)
リチャード・パワーズ、木原善彦訳『オルフェオ』(新潮社、2015年)