巽先生による解説「メタ物語の楽しみ」では、竹内氏のこれまでの著作も確認しつつ、ポー作品に関する批評史の展開を概観し、竹内氏の著作を「ポーをフランス系理論の影響化で読み直す風潮から真正のアメリカ作家として再評価する転換点」に位置付けます。また、竹内氏の論考の背後にジョン・トマス・アーウィンの著作が共鳴していることも指摘されます。——「真の批評というのは作家の編み出した物語に対して批評家が織り紡ぐメタ物語にほかならないと考えているが、そうした作業には探偵小説の中に作者も明記しなかったもうひとつの探偵小説を読み込んでしまう、一定のメタ感覚が不可欠だ」(解説より)。——ご関心のある方は、ぜひご一読ください!
『謎ときエドガー・アラン・ポー——知られざる未解決殺人事件』
竹内康浩
四六判変型、240ページ
新潮社、2025年 2月 20日
定価:1,815円
ISBN: 978-4-10-603923-2
【目次】
まえがき
序章――「犯人はお前だ」全文訳
第一章 挑発
オイディプス/なぜか真相を知らぬ村人たち/検討されない前提/二つのイタリクス/幻のワインの会話/謎の出題/手紙の日付と署名
第二章 矛盾
捜索を渋るグッドフェロー/語り手の変遷と屈折した計画/ペニフェザーとD大臣/村人たちの記憶力
第三章 未解決殺人事件
裏返された密室殺人/叙述トリックの核心/二つの死体/Here’s What Happened
第四章 鏡像
怪しい二人/半端な試み/半端な語り手/マトリョーシカ/ポー自身の「書き間違い」/敗者の盲点
第五章 もう一つの完全犯罪
「のこぎり山奇談」あらすじ/半回転すること/謎解きの試み/読者としての語り手/二つのフィクションあるいはコピー/腹話術としての催眠術
第六章 デュパンの誕生
ホームズの誤謬/侵入と脱出/窓のトリックと鏡像縛り/なぜオランウータンとデュパンは双子か
第七章 アナリシスとアナロジー
子供のゲーム/犯罪者としてのデュパン/アナロジー
第八章 謎のカギをひねり戻す
アッシャー家は崩壊したのか/「ウィリアム・ウィルソン」の腹話術師/「黒猫」の謎は解けるのか
あとがき
註解
解説――メタ物語の楽しみ 巽 孝之
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