また、本誌には「往復書簡」第二回として掲載された特別対談「草原の孤独・都市の孤独——創作の源泉をめぐって」(朝吹真理子&索南才譲[聞き手:関根謙])が掲載されています。本対談では、人と人との交流の不思議さ(魂と魂の交流の希少性と可能性)、記憶への依拠と不安定さ、さらには対談タイトルになっている「草原の孤独」と「都市の孤独」について、とわけ索南氏のバックグラウンドである遊牧民の人々が抱える「蒼白の孤独」について対話が深められていきます。
書評セクションでは、巽先生による書評「最晩年のスタイル——コーマック・マッカーシー『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』黒原敏行訳」が、マッカーシの晩年の二作を「二重小説」として再読し、いかなる目的のために「信頼しえない語り手」を衝突させたのかに迫ります。河内先生による書評「美しい毒——アンジェラ・カーター『英雄と悪党との狭間で』井伊順彦訳」は、本作のプロットを丁寧に確認されながら、「自分にあると思っていた自律性は、実は「裏づけされた事実ではなく、強いて抱いた幻想」だったのかもしれない」という「やさしい毒のような」認識に至らしめるものとして提示されます。
『三田文学』
No.160( 2025年冬季号)
2025年 1月 29日発売
定価: 1400円(税込)
【目次】
巻頭詩 学校(山田亮太)
■水上瀧太郎未発表書簡
慶應義塾福澤研究センター所蔵
梶原可吉宛阿部章蔵(水上瀧太郎)未発表書簡(網倉勲)
■往復書簡 大草原と東京をつなぐ文学の通信[第二回]
特別対談 草原の孤独・都市の孤独――創作の源泉をめぐって(朝吹真理子/索南才譲[聞き手]関根謙)
■小説
マグカップたち(藤野可織)
クジャ、ジントォヨー夜想(崎山多美)
我ドン・キホーテとゆく(大嶋岳夫)
■詩
内海幻想譚(鳥居万由実)
■第四十一回織田作之助青春賞
受賞作 26分間のタユタイ(風吉サツキ)
選評(堂垣園江/藤野可織/増田周子)
■特集 吉増剛造
"中間から思い浮かぶ"(フランツ・カフカ) (吉増剛造)
擬態と受容(倉石信乃)
詩 slash 存在――Gozoさんへの返歌(小林康夫)
石をポケットに(岡本小百合)
『ネノネ』の「ネ」ノート(亀山淳史郎)
窓、ポスカの線、声:吉増剛造を手読みする(今宿未悠)
お仕事をともにして(後藤亨真)
内面に映えた一本の樹――吉増剛造と慶應義塾高校のこと(古川晴彦)
身体となる言葉(朝吹亮二)
■随筆
フラグフレーズ奮闘記!――書店文化とシェア型本屋(竹内真)
■連載
■対比列伝 作家の仕事場[第六回]反時代であること 車谷長吉vs平野啓一郎(前田速夫)
■群島創世記[第二回]我望ム永遠記憶(今福龍太)
■リレーエッセー/論
■詩/エッセー/詩から明日へ[第七回]いとしいかたち――ものをかたちから見ることについての一考察(杉本真維子)
■演劇随想/舞台の輝き[第七回]あなたにとって戯曲とは(中屋敷法仁)
■演劇時評[第三回]仮面ペルソナを被る ――世田谷パブリックシアター『セツアンの善人』(柴田隆子)
■短歌/随筆
歌評たけくらべ[第十三回] (水原紫苑×川野里子)
■俳句/随筆
融和と慰謝の俳句[第十二回](髙柳克弘)
■映画評
電影的温故知新 [第二十六回](佐藤元状)
■書評
アマンダ・ゴーマン『わたしたちの担うもの』(鴻巣友季子 訳)(佐峰存)
加藤宗哉『遠藤周作 おどけと哀しみ わが師・狐狸庵先生との三十年』(村松真理)
コーマック・マッカーシー『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』(黒原敏行 訳)(巽孝之)
アンジェラ・カーター『英雄と悪党との狭間で』(井伊順彦 訳)(河内恵子)
榎本櫻湖『Hanakoganei Counterpoint』(カニエ・ナハ)
新 同人雑誌評(加藤有佳織/佐々木義登)
ろばの耳(阿川健志/藤野博/水上純)
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