2022/01/23

麻生えりか先生の翻訳による『わが上海—— 1942年〜 1946年』(伊藤恵子著)が小鳥遊書房より絶賛刊行中です!

このたび翻訳された『わが上海—— 1942年〜 1946年』(小鳥遊書房)は、英語版 My Shanghai, 1942-1946 (Renaissance, 2015) の特別縮約版。著者である伊藤恵子氏は、2016年に三田キャンパスにて、「歴史家が小説を書く時——My Shanghai, 1942-1946 を中心に」と題してご講演してくださいました(※CPA詳細)。また、文学者名鑑 Panic Literatiの第八号でも特集しています(※こちらからご覧頂けます)。

『わが上海—— 1942年〜 1946年』の舞台は、1942年から1946年の占領下の上海。本書は、主人公・岸本英子が綴る日記によって構成されています。刻々と情勢が変化する動乱の戦時下、上海という異国の地において、日本人、中国人、イギリス人、クエーカー教徒、ユダヤ人、ドイツ人、アメリカ人、そのほか立場を異にする様々な人々との交流を通じて、ときに時勢への無知を恥じながらも、こまやかに逞しく生き抜く英子の姿が描かれます。

◆◆◆声と一緒に出た私のため息をモナがさらに大げさに真似たので、二人そろって吹き出してしまった。彼女は私の両手をとって言った。「戦争について考えても難しすぎて結論を出せないし、私たちはほんの少ししか知らない上に、本当に起きていることについてはほとんど知らされていない。それでも、少なくともあなたと私は、こうして噂話をして推測したり、他の人には言えないようなことを言ったりして一緒に笑えるわ」私が考えていることを、モナがとてもさりげなく、ぴたりと言いあててくれた。(「六月一五日 木曜日」218頁)◆◆◆

麻生先生による解説は、著者伊藤恵子氏の経歴を詳細に概観したうえで、占領下の上海に関する先行研究、イギリス文学、戦争文学、女性文学、日記文学等の視座から、史実からはこぼれおちてしまう「人間どうしの等身大の交流」が描かれる意義をあらためて浮彫にします。また、翻訳の縮約版において削除された部分についても説明が加えられています。ご関心のある方は、ぜひご一読ください!



『わが上海—— 1942年〜 1946年』
伊藤恵子著、麻生えりか訳
四六判上製、380ページ
装画:中野正一
小鳥遊書房、2021年 12月 24日
本体 2,700円+税
ISBN: 978-4-909812-73-5

【目次】
第一部  一九四二年一月一五日〜一九四四年三月三一日
第二部  一九四四年四月三日〜一九四六年三月二八日
結び  一九四六年四月九日、夙川

訳者解説  麻生えりか

【関連リンク】

【関連書籍】  
伊藤恵子著、麻生えりか訳『わが上海—— 1942年〜 1946年』(小鳥遊書房、2021年)



Keiko Itoh, My Shanghai, 1942-1946 (Renaissance, 2015)




『三田文学』( 2018年春季号)※伊藤恵子氏による「ごきげんよう、ケンジントン公園」収録