2018/05/03

『三田文學』最新号( 2018年春季号)絶賛刊行中です!(特集:「イギリス小説の現在」)

この度刊行された『三田文学』最新号( 2018年春季号)の特集は「イギリス小説の現在」!冒頭には、板倉厳一郎先生、遠藤不比人先生、田尻芳樹先生、河内恵子先生(聞き手)による座談会「今、ここにあるイギリス小説」が掲載されています。加えて、四本の随筆、および歴史家で作家の伊藤恵子氏による作品「ごきげんよう、ケンジントン公園」が収録されています。

本特集所収の小谷真理先生の随筆「ニュー・ウィアードの新世紀――チャイナ・ミエヴィルと英国ファンタジーの潮流」は、SF(ニューウェーヴ/スチームパンク)、ホラー(ゴシック/テクノゴシック)、ファンタジー(児童文学/ダークファンタジー)を縦横無尽に参照されながら、ミエヴィルらが推進する「ニュー・ウィアード・ムーヴメント」の生態と繁茂と 21世紀的展開を浮き彫りにされています。ミエヴィルの代表作『ペルディード・ストリート・ステーション』(2000)の精緻な読解、およびアンソロジー『ザ・ウィアード』(2012; 芥川/荻原/村上/乙一作品収録)の魅力溢れるご紹介も必見です。

また、伊藤恵子氏は、以前に慶應義塾大学でご著書 My Shanghai, 1942-1946(2015)についてご講演してくださいました。本特集寄稿の「ごきげんよう、ケンジントン公園」は、現在構想中の長編小説『二つの世界のはざまで』(仮)の冒頭部分。第二次世界大戦前後の揺れ動く英国と日本を舞台に、そこで生きる父と娘の繊細な交わりが照らし出されています。

なお、書評欄では、松田隆美先生の『煉獄と地獄: ヨーロッパ中世文学と一般信徒の死生観』(評者:安藤礼二氏)、向山貴彦さん監修・向山義彦さん著『ちゅうちゃん』(評者:大串尚代先生)、タナハシ・コーツ『美しき闘争』(奥田暁代先生訳)&『世界と僕のあいだに』(池田年穂先生訳)(評者:巽孝之先生)が取り上げられています。

この機会にぜひお手にとってみてください!


『三田文学』
No. 133( 2018年春季号)
三田文学会
2018年 4月 10日発売
定価 980円(税込)
三田文学会による本誌紹介
※ご購入は三田文学会 HPの専用ページからどうぞ

【目次】
巻頭詩:世界の終わりのあとの世界の感じを、世界は世界にあるものすべての終わりなのだという感じを、 倉田比羽子
小説:くだけちるかもしれないと思った音 桜井晴也
小説:忘れられた片腕 閻連科(訳 飯塚容)
小説:ディーピカ 黒川英市
:群青の 杉本徹
:夜の思い出 マーサ・ナカムラ


新連載
  • 京極為兼の本懐 1(一章~三章) 高橋昌男
  • 迷宮の夢見る虎 1〈ボルヘス〉という秘め事 今福龍太

連載最終回 ジャック・デリダの思い出 [五] 浅利 誠

第二十四回三田文学新人賞 決定
受賞作:ツキヒツジの夜になる 佐藤述人
選評:いしいしんじ、小池昌代、青来有一、持田叙子

特集 イギリス小説の現在
  • 座談会:今、ここにあるイギリス小説 板倉厳一郎、遠藤不比人、田尻芳樹、河内恵子(聞き手)
  • 随筆:よろめいて獣性へ戻り――イシグロの『忘れられた巨人』とテニスンの『国王牧歌』 ニール・アディスン(訳 髙橋勇)
  • 随筆:ニュー・ウィアードの新世紀――チャイナ・ミエヴィルと英国ファンタジーの潮流 小谷真理
  • 随筆:ノスタルジーへの抵抗――カズオ・イシグロと日本の伝統 佐藤元状
  • 随筆:ある新刊紹介者の孤独――イギリス小説の現在をめぐって 原田範行
  • 小説:ごきげんよう、ケンジントン公園 伊藤恵子 (訳 麻生えりか/解説:河内恵子)
  • 特集の終わりに 河内恵子

講演:転機を迎えた文学のことば 古川日出男、永方佑樹(聞き手)
随筆:『仮装人物』のフィロソフィ 小中陽太郎
評論:香港文学――困惑から拓かれる方向  董啓章(訳 川村文彦)
翻訳詩:ヒロに降る雨 ジュリエット・サナエ・コーノ(訳 牧野理恵)
短歌/随筆:千年を隔てた恋の歌のやりとり[第八回] 水原紫苑
俳句/随筆:死季折々[第七回] 髙柳克弘


書評
  • 古屋健三『老愛小説』 加藤宗哉
  • 松田隆美『煉獄と地獄 ヨーロッパ中世文学と一般信徒の死生観』 安藤礼二
  • 向山義彦『ちゅうちゃん』 大串尚代
  • タナハシ・コーツ『美しき闘争』(奥田暁代訳)/『世界と僕のあいだに』(池田年穂訳) 巽孝之
  • ヘラ・S・ハーセ『ウールフ、黒い湖』(國森由美子訳) 粂川麻里生

連載
  • やんばるの深き森と海より[第六回] 目取真俊
  • ラカンと女たち [Ⅷ] 立木康介
  • [後期未翻訳テクスト]ロデーズの新たなテクスト[第六回]アントナン・アルトー[熊木淳訳]

その他
  • ろばの耳 添野博
  • 大銀杏の下で 米田沙由葵
  • 新 同人雑誌評 柳澤大悟/加藤有佳織
  • イベント:幕末と明治をつなぐ福沢諭吉――幕末の思想体験を再体験すること
  • イベント:近松門左衛門の世界 行方克巳
  • イベント:アムバルワリア祭Ⅶ 西脇順三郎と古代ギリシャ 森山緑


【関連リンク】


【関連書籍】
『三田文学』最新号( 2018年春季号)

Keiko Itoh, My Shanghai, 1942-1946 (Renaissance, 2015)


松田隆美『煉獄と地獄: ヨーロッパ中世文学と一般信徒の死生観』(ぷねうま舎、2017年)


向山義彦『ちゅうちゃん』(幻冬舎、2017年)


タナハシ・コーツ、奥田暁代訳『美しき闘争』(慶應義塾大学出版会、2017年)


タナハシ・コーツ、池田年穂訳『世界と僕のあいだに』(慶應義塾大学出版会、2017年)