2021/02/06

書肆侃侃房より『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』絶賛刊行中です!

加藤有佳織先生(本塾文学部)が執筆者の一人を担当される『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』が書肆侃侃房より絶賛刊行中です!

本書は、書肆侃侃房の web連載「web侃づめ」で連載されてきた「現代アメリカ文学ポップコーン大盛」、待望の書籍版。全八章構成、各章、四本〜九本の論考を収録し、現代アメリカ文学の「いま」を鋭くポップに浮かびあがらせます。取り上げられる作家作品は多種多様(下記目次をご覧ください)、加えて、執筆者八人のいろとりどりのフレーバーもきらりきらりと光ります(19世紀アメリカ文学の土壌から眺めてみたり、創作や翻訳から、グラフィックノベルから、身体(手話!)から、人種、ジェンダー、セクシュアリティから、静かな自問自答から、政治、暴力、貧困、歴史にかかわる問題意識から、途方もない他者の孤独と痛みから)。

加藤先生は、五つの論考—— 「居心地のわるい読書──ハニャ・ヤナギハラ『あるささやかな人生』」●「こわかわいい創造の物語──モナ・アワド『バニー』」(試し読みはこちら)●「3日目のアザの色みたいにきれいだ──パトリック・デウィットによる 4つの小説」●「オレンジのブックリスト──ジェイク・スキーツの詩集とシェリー・ディマラインの小説」●「ともだちのともだち──ジェニファー・クレイグ『ポット始めました』とシークリット・ヌーネス『友だち』」(試し読み)——を寄稿、とおり過ぎてしまいそうな違和感や距離感や視線の交錯をやさしく鋭利にひろいあげます。また、柴田元幸先生(東京大学名誉教授)をゲストにおむかえした座談会「正しさの時代の文学はどうなるか?」も特別収録。読んでみたい、とおもわずにはいられない作品にきっと出逢ってしまうはず。ぜひお手にとってみてください!

なお、「オレンジのブックリスト」ならぬ、オレンジのデビュー作『ゼアゼア』は、加藤先生の翻訳によって五月書房新社より絶賛刊行中。こちらも併せてぜひご一読ください!



『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』
青木耕平、加藤有佳織、佐々木楓、里内克巳、日野原慶、藤井光、矢倉喬士、吉田恭子
A5判、並製、376ページ
装幀:成原亜美
装画:藤井友子
書肆侃侃房、2020年
定価:本体1,800円+税
ISBN: 978-4-86385-431-4 C0095

【目次】
はじめに(青木耕平)

CHAPTER 1 現代アメリカ文学のおもしろさ
  • ひげを生やしたハックとトム──ロバート・クーヴァー『西部のハック』(里内)
  • 蚊が語るアフリカ100年の人間模様──ナムワリ・サーペル『オールド・ドリフト』(里内)
  • 竜の風と共に去りぬ──ル=グウィン遺稿『ゲド戦記』真の最終章「Firelight」を読む(青木) ★試し読みはこちら
  • 人はテロリストに生まれるのではない──カラン・マハジャン『小さな爆弾たちの連合』あるいは我らの時代(青木)
  • 取り残された人たちへの回路──ルシア・ベルリンの作品をめぐって(日野原)
  • ルイーズ・グリュック──「わたし」と対峙する詩人(吉田)

CHAPTER 2 浮かび上がるアメリカ社会
  •  “America” feat. Elvis Presley, 2018 Remix(藤井)
  • アウトソースされた苦しみ──ふたつの短編小説から(藤井)
  • 切り離されるもの──リン・マー『断絶』をめぐって(藤井)
  • スティル・ナンバー・ワン・アメリカン・サイコ──ブレット・イーストン・エリス、9年ぶりの帰還(青木)
  • ウェルカム・トゥー・(ポスト)エンパイア──B.E.エリス『ホワイト』part 2(青木)
  • 本日限定のセール──21世紀の暴力とゾンビ文化と翻訳と(藤井)
  • 『ビラヴド(愛されし者)』から『アンべリード(葬られぬ者)』へ──ジェスミン・ウォードとアメリカの10年(青木)
  • 文学を成功作と失敗作に分けてみよう──リチャード・グレイが提唱するフィクションの好ましきあり方(矢倉)
  • 分断されたアメリカにようこそ──T.ジェロニモ・ジョンソンの小説(里内)

COLUMN 
文学の現場はどこにあるのか──イギリスからみた文学創作(吉田)

CHAPTER 3 世界中を旅しながら 
  • 九龍に充実するオルタナティヴなリアル──香港バプテスト大学国際作家ワークショップ滞在記1(吉田) ★試し読みはこちら
  • 三首の女子がスペキュラティヴ・フィクションをスペキュレイトする──香港バプテスト大学国際作家ワークショップ滞在記2(吉田) ★試し読みはこちら
  • コルソン・ホワイトヘッドの基調講演中は日本庭園を回遊していました──ポートランドAWP19参戦記(吉田)
  • 哲学者と文学者を同じ部屋に2日間閉じ込めてみた──ラトガース大学翻訳ワークショップ報告(吉田)

CHAPTER 4 魅力的な作家たち 
  • 居心地のわるい読書──ハニャ・ヤナギハラ『あるささやかな人生』(加藤) 
  • こわかわいい創造の物語──モナ・アワド『バニー』(加藤) ★試し読みはこちら
  • 3日目のアザの色みたいにきれいだ──パトリック・デウィットによる4つの小説(加藤)
  • オレンジのブックリスト──ジェイク・スキーツの詩集とシェリー・ディマラインの小説(加藤)
  • ともだちのともだち──ジェニファー・クレイグ『ポット始めました』とシークリット・ヌーネス『友だち』(加藤) ★試し読みはこちら
  • 「素描」を書く者、「素描」を読む者(藤井) ★試し読みはこちら
  • 「生き延びる」とは何か、「俺たち」とは誰か(藤井)
  • 残像に目移りを──ドン・デリーロ『ポイント・オメガ』におけるスローモーションの技法(矢倉)
  • 孤独な人のための文学──ピーター・オーナーのささやかな世界(里内)

CHAPTER 5 フェミニズムとアメリカ文学 
  • #MeToo時代のクリエイティヴ・ライティング(吉田)
  • ダメ男のレガシーを語る女たち──パートI:アレグザンダー・ハミルトンの場合(吉田)
  • ダメ男のレガシーを語る女たち──パートII: ラフカディオ・ハーンの場合(吉田)
  • ゆがんだカラダ、ひびく声──カルメン・マリア・マチャドの小説(日野原)
  • ショーン・ペンよ、ペンを置け──“史上最悪”のデビュー作『何でも屋のボブ・ハニー』(青木)
  • ガールズ・パワーからホラーへ──クリステン・ルーペニアンによるポスト・トゥルース時代の小説戦略(矢倉)
  • 本でできた虹の彼方へ──レインボー・ブックリスト(佐々木)
  • 文学の不気味の谷を越えて──メレディス・ルッソの『イフ・アイ・ワズ・ユア・ガール』(佐々木)

CHAPTER 6 FATをめぐるものがたり 
  • FATをめぐるものがたり(1)──『ダイエットランド』と、あるひとつの解放宣言(日野原) ★試し読みはこちら
  • FATをめぐるものがたり(2)──ふとっていることの語源学(エティモロジー)と物語学(ナラトロジー)(日野原) ★試し読みはこちら
  • FATをめぐるものがたり(3)──『飢える私』と「残酷な」世界(日野原)
  • FATをめぐるものがたり(4)──『ミドルスタイン一家』と『ビッグ・ブラザー』における家族と身体(日野原) 

CHAPTER 7 文学は文字だけではない 
  • 文字は文字ではいられない──英語授業でグラフィック・ノベルを教える(矢倉)
  • 君、バズりたまふことなかれ──沈黙を取り戻すグラフィック・ノベル『サブリナ』(矢倉)
  • スケートリンクから宇宙の果てへ──ティリー・ウォルデン『スピン』『陽光に乗って』(里内)
  • あ・・・・・・ありのまま今起こったことを話すぜ!──ドラマ『13の理由』シーズン3で人は誰しも被害者と加害者の側面を持つという作風への批判が相次いだかと思ったら、いつのまにかオルタナ右翼が映画『パシフィック・リム』を理想的な世界とみなしている事実に気づかされていた(矢倉)
  • ソーシャル・ネットワークと文学──アダム・ジョンソン『フォーチュン・スマイルズ』/「ニルヴァーナ」(日野原)
  • タイラー・ダーデンふたたび、みたび──『ファイト・クラブ2』そして『ファイト・クラブ3』(青木)
  • トランプのいない世界の風刺──『サウスパーク』の受難(青木)
  • お目醒めはほどほどに──『デトロイト ビカム ヒューマン』における保守的ジェンダー観と人種表象について(矢倉)

CHAPTER 8 翻訳とは何か? 
  • 英語を壊すお・も・て・な・し──多和田葉子の『献灯使』とマーガレット満谷の『The Emissary』の翻訳術(矢倉)
  • 柴田さんと村岡さん──『ハックルベリー・フィンの冒けん』の新しさ(里内)
  • 詩人のように翻訳し、翻訳者のように創作せよ──パートI:翻訳とアイスランド語の未来(吉田)
  • 詩人のように翻訳し、翻訳者のように創作せよ──パートII:アメリカ手話の翻訳詩を「読んで」みる(吉田)

座談会「正しさの時代の文学はどうなるか?」 
加藤有佳織×柴田元幸×藤井光×矢倉喬士×吉田恭子

あとがき 
おわりに(矢倉喬士) 

【関連リンク】

【関連書籍】
トミー・オレンジ著、加藤有佳織訳『ゼアゼア』(五月書房新社 、2020年)