本書のキーワードは、タイトルの通り「暴力(Violence)」。十篇の論文から構成され、歴史(第一部)や、性差(第二部)、人種(第三部)、そして現代における核の問題(第四部)が取り上げられ、それぞれに見出される暴力の仕組みや作用が検証されます。また、本書における暴力は、身体的・物理的な「見える」ものにとどまらず、人を暴力行為へと向かわせる仕組みや作用もまた一つの「見えない」暴力と見なされ、独立戦争や奴隷制度、異性愛や核家族、人種差別や核をめぐる言説に宿る暴力の「不可視性」も探求されていきます。ご興味のある方はぜひご一読くださいませ。
題:アメリカン・ヴァイオレンス――見える暴力、見えない暴力
編:権田建二/下河辺美知子
判型:四六
頁数:341
出版:彩流社
刊行:2013年05月
定価:2500 + 税
*彩流社による本書詳細
【目次】
暴力と赦し/アレントからデリダをへて二十一世紀世界の新たなるレトリッ
クを求めて――序にかえて(下河辺美知子)
第一部 暴力の政治的パフォーマンス
1:「ベニト・セレノ」におけるリーダーの脆弱性――バボが振りかざす二
本目の短刀(大武佑)
2:アメリカ独立革命と暴力の幽霊――ナサニエル・ホーソン「総督邸に伝
わる物語」をめぐって(下河辺美知子)
第二部 セクシャリティは暴力といかなる共犯関係になりうるのか
3:イヴの娘たちの不合意書――ジョイス・キャロル・オーツ『レイプ―あ
る愛の物語』における性暴力と主体の行方(大串尚代)
4:カタストロフィあるいは「歴史」なき暴力/性――『ヴァージニア・ウ
ルフなんかこわくない』と冷戦期アメリカ( 遠藤不比人)
5:暴力は
(日比野啓)
第三部 人種のもたらす暴力性
6:十九世紀中葉における「抵抗する奴隷」の表象――フレデリック・ダグ
ラスとハリエット・ビーチャー・ストウの間テキスト的対話(堀智弘)
7:黒い恐怖・白い暴力――トマス・ディクソンの『豹の斑点』における暴
力と白人性の構築(権田建二)
第四部 核の想像力と国際戦略
8:ヒロシマから見たイラク戦争――否認され続けるDU(劣化ウラン)ヒ
バクシャたち(嘉指信雄)
9:惑星思考のブラックユーモア―― 九・一一以後のアメリカ文学の思想史
(巽孝之)
10:嘘と歴史――暴力のポリティックス(キャシー・カルース/下河辺美知
子訳)
おわりに(権田建二)
【関連書籍】
巽先生・大和田先生寄稿/下河辺先生編『アメリカン・テロル――内なる敵と恐怖の連鎖』(彩流社、2009年)
巽先生・大串先生寄稿/下河辺先生・権田先生編『アメリカン・ヴァイオレンス――見える暴力、見えない暴力』(彩流社、2013年)
【関連リンク】
・『アメリカン・テロル』刊行のお知らせ(CPA: 05/30/2009)
・彩流社