鴻巣氏による訳者あとがきでは、映画版『風と共に去りぬ』(1939年)も成功をおさめたものの、映画とは異なる本作の魅力を、「なにが書かれているか」ではなく「どのように書かれているか」という問いから、その文体的特徴に見いだされます。とりわけ、自由間接話法と内的独白の駆使による、登場人物群と語り手との声の響き合いと、それによるセンチメンタリズムに留まらない批評に批評を重ねる文体の強靱さを、現代日本語による翻訳作業を説明されながら、明らかにしてくださいます。
くわえて、巽先生による解説「レイディース・アンド・ジェントルメン」では、本作が同時代のベストセラーであった一方、文学史においては長らく顧みられなかったことを指摘されるとともに、1980年代以降の再評価を概観されます。また、登場人物レット・バトラーに注目し、南北戦争後から金ぴか時代に至る時代精神として、戦争を契機に稼いだならず者カーペッドバッガーやスキャラワグ、白人保守層により組織されたKKKなどを解説されながら、本作が時代・国家を超えて読者を魅了してきた理由を浮かびあがらせます。
この機会にぜひご一読ください!
『風と共に去りぬ』
マーガレット・ミッチェル / 鴻巣友季子訳
巽孝之解説
新潮社 / 文庫
第1巻:460pp / ¥767 / shinchosha web / 2015/04
第2巻:469pp / ¥767 / shinchosha web / 2015/04
第3巻:423pp / ¥724 / shinchosha web / 2015/05
第4巻:453pp / ¥767 / shinchosha web / 2015/06
第5巻:572pp / ¥853 / shinchosha web / 2015/07
【関連書籍】
マーガレット・ミッチェル著 / 鴻巣友季子訳『風と共に去りぬ 第1巻 (新潮文庫)』
マーガレット・ミッチェル著 / 鴻巣友季子訳『風と共に去りぬ 第2巻 (新潮文庫)』
マーガレット・ミッチェル著 / 鴻巣友季子訳『風と共に去りぬ 第3巻 (新潮文庫)』
マーガレット・ミッチェル著 / 鴻巣友季子訳『風と共に去りぬ 第4巻 (新潮文庫)』
マーガレット・ミッチェル著 / 鴻巣友季子訳『風と共に去りぬ 第5巻 (新潮文庫)』