アメリカ合衆国第三代大統領トマス・ジェファソンが、万人の自由を謳う独立宣言を起草しながら、250人以上の奴隷を抱える大農園主であったことはよく知られています。そして、ジェファソンと混血奴隷サリー・ヘミングスとの間に生まれた子供がいるという噂は、彼の存命中から実しやかに語られてきました。元奴隷であり、逃亡に成功した後は奴隷解放運動に尽力したウィリアム・ウェルズ・ブラウンは、この噂を題材に、大統領と奴隷の間に生まれた混血の娘クローテルの悲劇を描き、奴隷制の罪悪を告発します。ナット・ターナーの反乱、大統領選挙、禁酒運動といった同時代の出来事や、リディア・マリア・チャイルドを初めとした奴隷解放論者たちの著述作品へのオマージュなど、南北戦争に向かうアメリカの時代のうねり、言論の在り様が感じ取れます。
翻訳を担当されたアフリカ系アメリカ文学の権威、風呂本惇子先生の解説も必読です!
『クローテル――大統領の娘』
ウィリアム・ウェルズ・ブラウン
風呂本惇子訳、解説
四六判/297頁
松柏社
3240円(税込)
2015年2月25日刊行
*松柏社による本書詳細
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