2012/05/01

「うえ〜ぶ94」


アヴァンポップ研究で受賞
—『共同配信』8-9/1994


 米文学の先端を精力的に紹介している慶応大助教授の巽孝之さんが、これまた気鋭の論客ラリー・マキャフリー(米サンディエゴ州立大教授)と行った共同研究が高く評価され、このほど米国科学小説学会の最優秀論文賞を受けた。
 巽さんは一九八四年、米コーネル大学院に入学。ちょうどSF(科学小説)界に吹き荒れていたサイバーパンク旋風にいきなり巻き込まれた。受賞の対象になった評論の題は「メタフィクション、サイバーパンクからアヴァンポップへ」。
 聞き慣れない言葉、アヴァンポップ=アヴァンギャルド(前衛)+ポップカルチャー=とは?

巽:「前衛(芸術)は従来、消費されにくいものだと考えられていたが、高度資本主義社会では、それがいかにポップカルチャーと結託してきたかが露呈した。アヴァンポップとは、こうした結託そのものを積極的に取り込んだ芸術的潮流」

と話す。
 前衛と通俗(ポップ)という二項対立の解体はメディアによって促進される。現実とフィクションの対立もしかり。

巽:「例えばテレビゲームと湾岸戦争報道のテレビ画面。これまでは、現実がまずあって、それを描くフィクションがある—と思われてきたのが、現実そのものもフィクションだった」

 テレビゲームというフィクションの世界の文法が、現実を伝える(と思われていた)ニュース画面を支配してしまったというわけだ。
 近著の「メタフィクションの謀略」(筑摩書房)を予習してから話を聞いたが、それでもやや難解。そして早口。妻の小谷真理さんは巽さんを「少年時代からのSFおたく」と言う。
 SFを通じて知り合った二人は、ともにSFを評論する同業者でもある。シカゴで開かれた授賞式にも二人そろって出席。仲良しの秘密は「二人の分野はほとんど同じだが、少しだけずれているのがいいみたいです」(小谷さん)。

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