2025/04/03

彩流社より刊行された『アメリカ文学における終末論的想像力——アメリカ例外主義の展開と方向性』に、巽先生による特別寄稿「アメリカ大統領と終末論的想像力」が収録されています!

彩流社より『アメリカ文学における終末論的想像力——アメリカ例外主義の展開と方向性』(江頭理江、竹内勝徳、前田譲治編著)が刊行されています。本章は、サクヴァン・バーコヴィッチの『エレミヤの嘆き』を理論的土台の一つとしながら、19世紀から現代に至るアメリカ文学作品を各執筆者が取り上げ、そこに見出される終末論的想像力のありよう——「戦争、災害、政変、疫病、犯罪、恐慌など、この世の終わりを感じさせるあらゆる出来事に対する作家たちの文学的想像力」——とアメリカ例外主義の展開およびそれに対する批判を詳らかにしていきます。

巽先生による特別寄稿「アメリカ大統領と終末論的想像力」は、トランプの連呼する「魔女狩り」という言葉の実態と意味を分析しつつ、それに絶望したエリクソンの『アメリカは吃る』を取り上げ、そこに胚胎される終末論的瞬間——17世紀植民地時代の魔女狩り、ヒロシマ、ナガサキへの原爆投下、そして議事堂襲撃事件「J6」——とアメリカ大統領が不可分の関係を築いていることを明らかにします。また、1963年〜1973年に注目し、ニクソン大統領によるウォーターゲート事件の「言い訳」と、ポール・ド・マンの論考「盗まれたリボン」の共鳴を指摘し、最後に、植民地時代におけるニュー・アムステルダム(マンハッタンのオランダ系植民地)の歴史の重要性を問い、『白鯨』と「代書人バートルビー」で共振する「壁」を検討することで、19世紀から21世紀の現在に至るまで「人類を縛り続けている」「終末論的闘争の遺産」を浮彫にします。ご関心のある方は、ぜひご一読ください!



『アメリカ文学における終末論的想像力——アメリカ例外主義の展開と方向性』
江頭理江、竹内勝徳、前田譲治編著
A5 / 360ページ
彩流社、2025年 1月 14日
定価: 4,400円(税込)
ISBN: 9784779130083

【目次】
まえがき
特別寄稿「アメリカ大統領と終末論的想像力」(巽孝之)

第一部
  • 第一章「〈風景〉とマニフェスト・デスティニー——エマソン・超越主義・領土拡張の欲動について」(成田雅彦)
  • 第二章「私たちはどう生きるか——エマソンの『自己信頼』におけるヴァルネラビリティの倫理」(生田和也)
  • 第三章「独身女性が書く家事手引書——キャサリン・ビーチャーの『家庭経済論』と『アメリカ女性の家』」(秋好礼子)
  • 第四章「反時代的考察者としてのヘンリー・アダムズ——『ヘンリー・アダムズの教育』を中心に」(砂川典子)

第二部
  • 第五章「絶滅という思想——十九世紀アメリカにおける環境終末論」(高橋勤)
  • 第六章「『大理石の牧神』における絵画と身体——ナサニエル・ホーソーンの終末論的想像力」(川下剛)
  • 第七章「『ハックルベリー・フィンの冒険』とその批評的冒険にみる(非)ヘーゲル的精神の冒険——マーク・トウェインとアメリカの成長拒否と終末論的想像力」(吉津京平)
  • 第八章「『船乗りビリー・バッド(インサイド・ナラティブ)』における黙示録的運命」(竹内勝徳)

第三部
  • 第九章「ポストアポカリプス的想像力とデモクラシーの「未来」——『オリクスとクレイク』と『沈黙』を中心に」(渡邉克昭)
  • 第十章「彼らの夢は実現したのか——トウェインと フィッツジェラルドに見る夢の迷走」(江頭理江)
  • 第十一章「『怒りの葡萄』の終末描写に見るスタインベックのアメリカ像」(前田譲治)
  • 第十二章「「丘の上の町」は安住の地か——「魔法の樽」にみるユダヤ性と普遍性」(綱智子)
  • 第十三章「「終わり」のない旅——スティーヴン・キングのダーク・タワーの先に」(宮内妃奈)

あとがき
索引
編集者・執筆者紹介

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