2023/04/27

『三田文学』最新号(2023年春季号)が絶賛刊行中です!

『三田文学』最新号(第 153号)が刊行されました!

本誌では、第二十九回三田文學新人賞が発表されています。小説部門では、鳥山まこと氏による「あるもの」、評論部門では、粟津礼記氏による「読む小説——安岡章太郎『果てもない道中記』論」と、石橋直樹氏による「〈残存〉の彼方へ——折口信夫の「あたゐずむ」から」が受賞されました。いしいしんじ氏、小池昌代氏、青来有一氏、持田叙子氏による選評もお読み頂けます。

また、本誌には、吉増剛造氏と今福龍太氏による対談「ジョナス・メカス——いくつもの言語に流され、たどりついた原初の言葉」(映画『眩暈 VERTIGO』舞台挨拶)も収録されています。映画作家ジョナス・メカス氏をめぐって、今福氏がメカス氏の日記『ニューヨーク・ダイアリー』をときおり参照されながら、吉増氏とメカス氏の接点、多言語の習得と「前-言語」「原-言語」の喪失の問題、“missing”(見失う、見逃す/懐かしい)や “Gozo”(Gozo/extasy)の意味の重複性などを語りつつ、読者を心の躍る方向へいざないます。加えて、本誌は「2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降に書かれた詩」を掲載。カテリーナ・ミハリーツィナ氏、イーホル・アスタペンコ氏、マリーナ・ポノマレンコ氏による詩が原田義也氏による翻訳で紹介され、戦争を日常として生きざるを得ない貴重な声が届けられています。

お馴染みの連載セクションでは、佐藤元状先生による映画評「電影的温故知新 [第十九回]」が、小森はるかの『息の跡』を中心に、朗読パフォーマンスの重要性を浮かびあがらせます。また、大和田俊之先生による音楽評「ラップの詩学 [第十六回]」は、メーガン・ザ・スタリオンを取り上げ、その詩が持つ韻の技巧や日本アニメへの言及に光をあて、彼女の詩の魅力をお教えくださいます。

書評セクションには、河内恵子先生による書評「声たちが満ちる世界——カミーラ・シャムジー『帰りたい』」が収録され、本書のストーリーを丁寧に辿られながら、「親と子、姉と弟妹、宗教と政治、国家と個人といった多種多様な関係性が登場人物たちの哀しい声で語られる。これはきわめて美しく重い作品だ。それぞれの人物が奇妙なほど真面目に生に向き合い、自らの声で真剣に語ろうとする」とご指摘されます。また、巽先生による書評「踊る満州のスキャンダル——小川哲『地図と拳』」は、本書を満州を霊感源としたユートピア/ディストピア文学の伝統に位置付けながら、  1)満州に傀儡国家を建設する日本側の地図作成学的要請と、2)そうした日本の帝国主義的侵略を不満に思う中国側のテロリズム的要請、といった二つのベクトルに(複雑怪奇な)プロットを絞り、本書の読みどころをお教えくださいます。

ご関心のある方は、ぜひご一読ください!



『三田文学』
No.153(2023年春季号)
2023年 4月 12日発売
定価1000円(税込)

【目次】
■巻頭詩
ナイトフライト 北川朱実

■小説
ブサとジェジェ 嶽本野ばら

■詩
百年のリハーサル 岡本啓

■第二十九回三田文學新人賞 発表
■小説部門
受賞作 あるもの 鳥山まこと
■評論部門
受賞作 読む小説 安岡章太郎『果てもない道中記』論 粟津礼記
受賞作 〈残存〉の彼方へ―折口信夫の「あたゐずむ」から― 石橋直樹
選評 いしいしんじ/小池昌代/青来有一/持田叙子

■追悼 加賀乙彦
さようなら、K先生――加賀乙彦さんを偲んで 岳真也
長篇作家・加賀さんの知と信仰 加藤宗哉

■映画『眩暈 VERTIGO』舞台挨拶
ジョナス・メカス いくつもの言語に流され、たどりついた原初の言葉 吉増剛造×今福龍太

■対談
音楽と分人 平野啓一郎×中川ヨウ

■評論
萩原朔太郎と戦争――「愛国詩」とはなにか 林浩平

■随筆
岳真也と私と「三田文学」――『家康と信康』を読みながら。 山崎行太郎

■2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降に書かれた詩 
[訳]原田義也
2022年3月14日 カテリーナ・ミハリーツィナ
2022年3月25日 イーホル・アスタペンコ
2022年4月4日 マリーナ・ポノマレンコ

■連載
動かぬ時の扉 [第五回] 辻仁成
琉球弧歌巡礼りゅうきゅうこうたじゅんれい [第七回]『花風はなふー』宮沢和史
東京日記 [第五回]スミダ川とアートとシバ・イヌと クリストフ・ペータース [訳]粂川麻里生
最終回 インティマシーの倫理 [第八回]他者の倫理に向けて 山内志朗
最終回 予言と言霊   出口王仁三郎と田中智学の言語革命[第十二回] 鎌田東二

■浅草の笑い[第八回]
浅草芸人盛衰記 根岸興行部VS松竹 岡進平
大上こうじの浅草21世紀と浅草 大上こうじ

■文芸時評[第八回]
文学の境界線ボーダーライン  〈触れる〉ことの困難の先にあるもの 仲俣暁生

■短歌/随筆
歌評たけくらべ[第六回] 水原紫苑×川野里子

■俳句/随筆
融和と慰謝の俳句[第五回] 髙柳克弘

■映画評
電影的温故知新 [第十九回] 佐藤元状

■音楽評
ラップの詩学 [第十六回] 大和田俊之

■書評
カミーラ・シャムジー『帰りたい』(金原瑞人・安納令奈 訳) 河内恵子
小川哲『地図と拳』 巽孝之

新 同人雑誌評 佐々木義登/加藤有佳織
ろばの耳 黒田修生/廣田佳彦

【関連リンク】