2023/03/07

『三田文学』最新号(2023年冬季号)が絶賛刊行中です!

『三田文学』最新号は、特集「朔太郎・順三郎と詩の未来」を収録。企画展「萩原朔太郎大全 2022」記念シンポジウム「萩原朔太郎と詩の未来」と、シンポジウム アムバルワリア祭Ⅺ「詩は訳されたがっている?!──西脇順三郎と翻訳の詩学」を掲載しています。前者のシンポジウムでは、松浦寿輝氏による基調講演での萩原朔太郎の特異な時間感覚やその修辞に見られる反復や連用中止法のお話から始まり、西脇順三郎そして吉増剛造との共通点や差異、「永遠」や「さびしさ」のもつ問題系へと話題が広がっていきます。後者のシンポジウムでは、西脇順三郎と翻訳の関係について、とりわけ西脇のマラルメの翻訳やその理解、翻訳のもつ創造的側面、そして西脇と英語ないし古英語との関わりが与えた文学的影響などが議論されています。

他にも、本誌は、特集「ウクライナ・ロシアからの声」を収録。越野剛氏による序文「文学史から考えるウクライナとロシア」に加え、ウクライナとロシア、そして戦争や紛争時に文学や詩が担う役割について思考する大きなヒントとなる四本の論考が掲載されています。

お馴染みの連載セクションでは、佐藤元状先生による映画評「電影的温故知新 [第十八回]」が、『燃ゆる女の肖像』を取り上げ、セリーヌ・シアマ監督のフェミニズムの特徴を考察されています。また、大和田俊之先生による音楽評「ラップの詩学 [第十五回]」は、ニッキー・ミナージュに焦点を置き、キャラクターに命を吹き込む彼女のラップの力に光をあてています。

書評セクションでは、巽先生による書評「大鷲と胡蝶のためのレクイエム——海堂尊『奏鳴曲 北里と鴎外』」が収録され、本書が描きあげる日本近代医学の父北里柴三郎と日本近代文学の父森鴎外との熱いライバル関係、その読みどころをお教えくださいます。また、河内恵子先生による書評「問い続ける文学——村田沙耶香『信仰』」は、本書に収録された中・短篇作品がいかに現代社会の様々な側面を繊細に、ときにユーモラスに、ときに冷徹に捉えているかを鮮明に浮かびあがらせます。

ご関心のある方は、ぜひご一読ください!



『三田文学』
No.152(2023年冬季号)
2023年 1月 12日発売
定価1000円(税込)

【目次】
■特集 朔太郎・順三郎と詩の未来
■企画展「萩原朔太郎大全2022」記念シンポジウム
萩原朔太郎と詩の未来
松浦寿輝×吉増剛造×三浦雅士×マーサ・ナカムラ[司会]朝吹亮二

■シンポジウム アムバルワリア祭Ⅺ
詩は訳されたがっている?!──西脇順三郎と翻訳の詩学
朝吹亮二×エリック・セランド×松田隆美[司会]野村喜和夫

慶應義塾大学アート・センター「西脇順三郎コレクション」のこと、新倉俊一先生のこと 笠井裕之

■巻頭詩
琺瑯日 須永紀子

■詩
雪山 尾久守侑

■小説
2分57秒の真実ゆめ 岳真也
カネタタキ 田村初美
伴天連・コロナ・ゴディバのチョコレート 小林かをる

■第三十九回織田作之助青春賞
受賞作 浴雨 菊池フミ
選評 堂垣園江/増田周子/吉村萬壱

■ウクライナ・ロシアからの声
■序文
文学史から考えるウクライナとロシア 越野剛
■評論
ネーションと帝国の二重性 ウクライナ知識人のアイデンティティ形成 大野斉子
ブルガーコフは「ウクライナ嫌い」の作家か 大森雅子
オレーナ・テリーハはいかにしてウクライナの詩人となったか 原田義也
なぜドンバスでSF大会か? 宮風耕治

■連載
動かぬ時の扉 [第四回] 辻仁成
琉球弧歌巡礼りゅうきゅうこうたじゅんれい [第六回]『伊良部トーガニー』 宮沢和史
インティマシーの倫理 [第七回]倫理のトポロジカルな起源 山内志朗
予言と言霊   出口王仁三郎と田中智学の言語革命[第十一回] 鎌田東二

■浅草の笑い[第七回]
浅草芸人盛衰記 松竹の浅草進出 岡進平
大上こうじの浅草21世紀と浅草 大上こうじ

■文芸時評[第七回]
文学の境界線ボーダーライン  傾き、閉じた世界から抜け出すための〈蛇行〉仲俣暁生

■短歌/随筆
歌評たけくらべ[第五回] 水原紫苑×川野里子

■俳句/随筆
融和と慰謝の俳句[第四回] 髙柳克弘

■映画評
電影的温故知新 [第十八回] 佐藤元状

■音楽評
ラップの詩学 [第十五回] 大和田俊之

■書評
大濱普美子『陽だまりの果て』 桐本千春
海堂尊『奏鳴曲 北里と鷗外』 巽孝之
村田沙耶香『信仰』 河内恵子

新 同人雑誌評 加藤有佳織/佐々木義登
ろばの耳 阿川健志/橘カオル/藤野博/吉森由知

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