2022/10/29

『三田文学』最新号(2022年秋季号)が絶賛刊行中です!

『三田文学』最新号では、特集「没後百年——生き続ける鷗外」が組まれ、二本のインタビューと二本の評論が掲載されています。作家平野啓一郎氏へのインタビュー「鷗外の描く〈生〉と〈死〉」と詩人伊藤比呂美氏へのインタビュー「森鷗外、切腹する身体と文体」では、それぞれの書き手が鴎外文学にこれまでどのように触れてきたのか、とりわけ両者ともに鴎外の文体的魅力と切腹への関心について興味深くお話しされています。井戸田総一郎氏による評論「演劇人 森鷗外――『三田文学』と自由劇場」では、鴎外と演劇の関係が詳述され、合山林太郎氏による「鷗外と明治の漢詩人たち――艶情の系譜」は、鴎外と同時代漢詩人たちとの交流から鴎外作品に見られる艶情の系譜を浮彫にします。

また、本号には前号に引き続き「ウクライナ・ロシアからの声」が収録。原田義也氏による評論「ウクライナは勝つ!(ウクライーナ・ペレモージェ!)」という歌について」に続いて、「2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降に書かれた詩 (訳:原田義也)」として、ターニャ・ヴラーソワ氏とリュドミーラ・ゴロワ氏の作品がそれぞれ二篇ずつ掲載されています。現在も続く苛酷な状況を詩を通して冷徹に記録するとともに、来るべき未来や癒やしに向けたかけがえのない言葉も緻密に紡ぎます。

お馴染みの連載、佐藤元状先生による「映画評:電影的温故知新 [第十七回]」は、アリーチェ・ロルヴァケル監督『幸福なラザロ』を対象に、その映画的寓話性を詳述されます。大和田俊之先生による「音楽評:ラップの詩学 [第十四回]」は、ミッシー・エリオットの詩とその実験性に切り込みます。

書評セクションには、河内恵子先生による「ヒカリが照らし出すもの——松浦理英子『ヒカリ文集』」が収録。「周りの多くの者を明るく照らしながらもその存在そのものは暗く、そこにどのようなエネルギーが潜んでいるのかわからない」と表現されるヒカリの有り様をあらためて詳細に照らし出します。巽先生の「三人の女と三つの言葉——モニク・トゥルン『かくも甘き果実』(吉田恭子 訳)」では、本書におけるラフカディオ・ハーン/小泉八雲と関係した三人の女性の語りを追いながら、本書の読みどころをお教えくださいます。

ご関心のある方は、ぜひご一読ください!



『三田文学』
No.151(2022年秋季号)
三田文学会、2022年 10月 11日
定価 1000円(税込)

【目次】
■シンポジウム
松本隆〈言葉の教室〉 松本隆 [聴き手]延江浩[司会進行]宇賀なつみ

■巻頭詩
TSUKISARA 6 田野倉康一

■詩
うぃ。すぃねまとぐらふぃーきヱ 、るそぅんⅧ 蜆シモーヌ

■特集 没後百年——生き続ける鷗外
■インタビュー
鷗外の描く〈生〉と〈死〉 平野啓一郎[聞き手]小平麻衣子
森鷗外、切腹する身体と文体 伊藤比呂美[聞き手]粂川麻里生

■評論
演劇人 森鷗外――『三田文学』と自由劇場 井戸田総一郎
鷗外と明治の漢詩人たち――艶情の系譜 合山林太郎

■小説
つくねの内訳 佐藤述人
本郷通り――ある作家の想い出―― 大嶋岳夫

■評論
愛国と棄国のあいだ――上海の堀田善衞 奥憲介

■ウクライナ・ロシアからの声
■評論
「ウクライナは勝つ!(ウクライーナ・ペレモージェ!)」という歌について 原田義也

■2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降に書かれた詩 [訳]原田義也
2022年3月14日・2022年3月22日 ターニャ・ヴラーソワ
2022年4月13日・2022年4月22日 リュドミーラ・ゴロワ

■連載
動かぬ時の扉 [第三回] 辻仁成
琉球弧歌巡礼りゅうきゅうこうたじゅんれい [第五回]『ブラジルぬサビヤ』 宮沢和史
東京日記[第四回]禅と煙草 クリストフ・ペータース[訳]粂川麻里生
インティマシーの倫理 [第六回]世界の中の居場所 山内志朗
予言と言霊   出口王仁三郎と田中智学の言語革命[第十回] 鎌田東二

■浅草の笑い[第六回]
浅草芸人盛衰記 浅草オペラの女優たち 岡進平
大上こうじの浅草21世紀と浅草 大上こうじ

■文芸時評[第六回]
文学の境界線ボーダーライン  彼らの〈戦場〉から、彼女らの〈フィールド〉へ 仲俣暁生

■短歌/随筆
歌評たけくらべ[第四回] 水原紫苑×川野里子

■俳句/随筆
融和と慰謝の俳句[第三回] 髙柳克弘

■映画評
電影的温故知新 [第十七回] 佐藤元状

■音楽評
ラップの詩学 [第十四回] 大和田俊之

■書評
松浦理英子『ヒカリ文集』 河内恵子
キム・スム『Ⅼの運動靴』(中野宣子 訳) 滝口葵已
佐藤洋二郎『Y字橋』 関根謙
モニク・トゥルン『かくも甘き果実』(吉田恭子 訳) 巽 孝之

新 同人雑誌評 佐々木義登/加藤有佳織
ろばの耳 衛藤栄津子/神宮みかん

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