本論文は、アメリカン・ルネサンスにおける疫病と仮面が不穏に結託した三題噺——ポー「赤き死の仮面」、ホーソーン「ハウ総督の仮面舞踏会」、メルヴィル『詐欺師』——を起点としながら、トマス・ハリオットの植民地報告記、イシュメル・リード『マンボ・ジャンボ』、チャールズ・ブロックデン・ブラウン『アーサー・マーヴィン』、小松左京『復活の日』、マイクル・クライトン『アンドロメダ病原体』、ひいてはジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』を経由して、アメリカ植民地時代から引き継がれる「隠喩としての病」が、時代や土地を越境・交錯することによって、あるいはコロナ禍という「転覆的な」時代を経験することによって、その構造が抜本的に組み替えられ、あらたな物語学を構築していく可能性が照射されます。ご関心のある方は、ぜひご一読ください!(※ J-STAGEからお読み頂けます)
『アメリカ研究』
第 56号
アメリカ学会
2022年 3月
【目次】
座談会
「Is America Back?:アメリカの覇権の現在」前嶋 和弘, 久保 文明, 佐藤 丙午, 越智 博美
特集論文:「疫病/公衆衛生」
- 人間機械論と公衆衛生の定義――革新主義期アメリカにおけるC.-E. A. ウィンズローと人間工学運動―― 上野 継義
- 公衆衛生の担い手――ロックフェラー財団国際保健部と農村部公衆衛生1900–1932 平体 由美
- 植民地期フィリピンにおける保健衛生事業と赤十字人道主義 牧田 義也
- 比喩との抗い―ジャック・ロンドンの癩病表象 高野 泰志
- 濫喩としての感染――アメリカ文学思想史の視点から―― 巽 孝之
- 英雄的医療時代の不機嫌なロマンス作家――ジェイムズ・フェニモア・クーパーとアンテベラム期の医療言説 林 以知郎
自由論文
- 20世紀はじめの米国の社会改革運動と国際女性平和運動――エミリー・グリーン・ボルチの民族,国家,国際協調の思想を中心に 一政(野村) 史織
- 善き生の回復を求めて――ラルフ・アダムズ・クラムの教会建築論に見る革新主義期アメリカに抗するアングロ・カトリシズムの想像力(イマジェリー) 佐々木 一惠
長文書評
書評:志田淳二郎『米国の冷戦終結外交――ジョージ・H・W・ブッシュ政権とドイツ統一』(有信堂高文社,2020年) 村田 晃嗣
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