2014/06/07

世界思想社『災害の物語学』刊行:巽先生寄稿「何かが空から降ってくる―ソロー、アンダーソン、村上春樹」

ときに言葉を奪う災害が、いかに人間の想像力に働きかけ、物語を生みだすのか?本書『災害の物語学』には、アメリカ文学を対象に、災害と物語を主題にした十二本の論文が収録されております。取り上げられる作家は、チャールズ・ブロックデン・ブラウンから、アメリカン・ルネッサンスのホーソーン、メルヴィル、ソロー、ポー、20世紀以降では、フォークナー、スタインベックに、エリザベス・スペンサー、フィリップ・ロス、スーザン・ソンタグ、トニー・クシュナーと、非常に多彩!それぞれの作家たちが、自然災害・環境破壊・疫病あるいは超常現象といった、日常性をつき崩す非日常な出来事に、いかに対峙し、反応し、言葉を紡いだのかが探求されています。

巽先生のご論文「何かが空から降ってくる」では、ソローの『ウォールデン』、ポール・アンダーソン監督の映画『マグノリア』、そして村上春樹の『海辺のカフカ』が取り上げられ、両生類から始められる「惑星的危機意識」が探られます。ご関心のある方、必読です!


題:『災害の物語学』
編:中良子
判型:四六
頁数:336
出版:世界思想社
刊行:2014年5月
価格:本体3,500円+税
世界思想社による本書詳細

【目次】
序 災害と言葉/物語(中良子)

第一章 災害と想像力の境界
難船体験とアメリカとの遭遇(林以知郎)
ダスト・ボウル難民のドキュメンタリー表象―『移住農民の母』と『怒りの葡萄』(中良子)
噴火・蒐集・生成―『火山の恋人』における歴史の創造/想像(渡辺克昭)
何かが空から降ってくる―ソロー、アンダーソン、村上春樹(巽孝之)

第二章 災害と物語のまなざし
災害の「いま」をめぐって―アメリカと物語・戦争・動物(藤井光)
フォークナーの「オールド・マン」における野生との遭遇―自然災害によってもたらされた現実界と意識の無(松岡信哉)
ハリケーンのメタファーと南部的体験の拡張―エリザベス・スペンサーの『ソルトライン』(石本哲子)
大水のあとに―エコ・カタストロフィ小説の眼差し(藤平育子)

第三章 災害と物語のポリティクス
疫病のナラティヴ―ポー、ホーソーン、メルヴィル(西山けい子)
天界と人間界、災害を生き抜く政治学―トニー・クシュナーの『エンジェルス・イン・アメリカ』(貴志雅之)
「見えない矢」を語る―フィリップ・ロスの『ネメシス』(杉澤伶維子)
病める都市フィラデルフィア―『アーサー・マーヴィン』におけるメタファーとしての黄熱病(大井浩二)

あとがき
事項索引
人名索引
執筆者紹介