2024/01/28

『三田文学』(2023年秋季号)が絶賛刊行中です!

『三田文学』(2023年秋季号)が絶賛刊行中です!本号では、二つの特集が組まれています。一つ目は「久保田万太郎と現代」。2023年は久保田万太郎の没後六十年であり、久保田万太郎およびその文学的功績に関して、それぞれ独自の切り口から五つの論考が寄せられています。二つ目は「ヘテロトピア群島・沖縄」です。2023年に開催されたシンポジウムを受け継ぐかたちで、沖縄に焦点を置き、一つの詩と三つの論考が収録されています。川満信一の「絶対不戦の思想」や映画『ばちらぬん』が取り上げられ、「ヘテロトピア群島」という視座のありようもあらためて詳説されています。また、「ウクライナからの声——2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降に書かれた詩」は今回で最終回を迎えます。今回は三人の詩人の作品が紹介され、戦時下における「詩」とは何か、「戦時下に生きる」とはどういうことかが深く問われています。

お馴染みの連載として、佐藤元状先生による映画評「電影的温故知新 [第二十一回]」が掲載されてます。今回は、ナンニ・モレッティ監督『3つの鍵』が取り上げられ、本作に見られる巧妙な仕掛けが読み解かれます。また、坂手洋二氏による「演劇随想/舞台の輝き——俳優は、声である」も収録されています。演劇における俳優の「声」、「相手のセリフを聞き」、「相手に届ける」ことの身体的な実践の意義が説かれています。

書評欄では、巽先生による書評「クイーン・コングの逆襲」(須藤古都離『ゴリラ裁判の日』)が収録され、ゴリラの棲息エリアに落ちてしまった人間の少年に危害を加える危険性のため射殺されたゴリラに対し、実際には危険性はなかったという証言がなされ訴訟に発展するというユニークなプロットとその読みどころをお教えくださいます。また、河内先生による書評「暴力を文学する」(パット・バーカー『女たちの沈黙』)は、トロイア戦争を題材にした本作で描かれる人間生活の細部、アキレウスの描写、そして戦争の「戦利品」となった女性たちの逞しさに注目しつつ、戦争という暴力をそれでも「生き抜くこと」の価値を明らかにされます。

ご関心のある方は、ぜひご一読ください!




『三田文学』
第 155号(2023年秋季号)
2023年 10月 12日
定価:1000円(税込)

【目次】
■巻頭詩
汗玉 新井高子

■小説
龍王閣りゅうおうかく 村松友視
外道丸 藤沢周
カヤックの男 C・W ニコル[訳] 鈴木扶佐子・宮島正洋
解説 日本人Ⅽ・Wニコルが遺した未発表小説 宮島正洋

■新連載
■対比列伝 作家の仕事場
自由と拘束 安部公房vs三島由紀夫 前田速夫

■評論
安岡章太郎論――「第三の新人」の原型としての初期作品 田中和生

■詩
微睡む庭 望月遊馬

■特集 久保田万太郎と現代
物質と記憶――折口信夫から見た久保田万太郎 安藤礼二
久保田万太郎「町の音」――戦下に酒を飲む女たち 小平麻衣子
十七音のアーティスト 髙柳克弘
浅草っ子万太郎 岡進平
「櫻隊」と「櫻の園」 中川右介

■特集 ヘテロトピア群島・沖縄
■詩
胞衣に包まれた詩 川満信一
■論考
震える白旗のユートピア──川満信一「絶対不戦の思想」を読む 今福龍太
海と島と境界をめぐる身体地図 仲里効
群島のヘテロトピア、その共感の回路と眩暈 上野俊哉

■ウクライナからの声 最終回
■2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降に書かれた詩 [訳]原田義也
2022年3月31日・2022年4月3日 ユリヤ・ムサコフスカ
2022年4月16日 オレーナ・ヘラシムユーク
2022年5月12日 マリヤナ・サフカ

■連載
■詩/リレーエッセー/詩から明日へ[第二回]
わたしよ、起これ 中尾太一

■演劇随想/舞台の輝き[第二回]
俳優は、声である 坂手洋二

琉球弧歌巡礼りゅうきゅうこうたじゅんれい [第九回]『でいごの花』 宮沢和史

■浅草の笑い[第十回・最終回]
浅草芸人盛衰記 エノケン・永田キング・森川信、そして現代の浅草へ 岡進平
大上こうじの浅草21世紀と浅草 大上こうじ

■文芸時評[第十回・最終回]
文学の境界線ボーダーライン  〈枯れ葉〉の立てる音、〈精霊〉を呼ぶ声 仲俣暁生

■短歌/随筆
歌評たけくらべ[第八回] 水原紫苑×川野里子

■俳句/随筆
融和と慰謝の俳句[第七回] 髙柳克弘

■映画評
電影的温故知新 [第二十一回] 佐藤元状

■連載
東京日記 [第七回]奇跡のウノハナガキ クリストフ・ペータース [訳]粂川麻里生

■書評
ローラン・ビネ『文明交錯』(橘明美 訳) 小倉孝誠
須藤古都離『ゴリラ裁判の日』 巽孝之
パット・バーカー『女たちの沈黙』(北村みちよ 訳) 河内恵子
鵜飼哲『いくつもの砂漠、いくつもの夜 災厄の時代の喪と批評』 宗近真一郎

新 同人雑誌評 佐々木義登/加藤有佳織
ろばの耳 関根徳男/村上順三/毛利英雄

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