2016/12/12

Panic Americana #21 “Glittering”

Glittering
今年度のテーマは「Glittering」です。「Glittering」とは「闇の中できらきら輝く」という意味を持つ言葉です。スコット・フィッツジェラルドの「マイ・ロスト・シティ」というエッセイに “O glittering and White!”という一節があります。この言葉にはジャズエイジのニューヨークが株価大暴落で一気に崩壊した様に対する感慨の念が含まれています。「光り輝く街は崩れ去った、失われた私の街」と言わしめた、エンパイア・ステート・ビルの頂上から見渡したニューヨークの景色は、いま私たちが住む世界の姿に通ずるところがあるのではないでしょうか。

五年前の東日本大震災で、文字通り多くの街が失われました。人々は絶望の中で涙し、それまでの生活は脆くも崩れ去ってしまいました。私たちの世界は闇に覆われてしまったかのようでした。それでもなんとか無我夢中に生きているうちに徐々に復旧も進み、闇の中に微光が灯ってきたような、そんな気がしていました。

しかしそんなとき、日本ではまた熊本で地震が発生し、パリではテロが起き、アメリカではトランプが暴走しました。再び街は失われ、遠い先に見えてきたと思っていたあの微々たる光はまた闇に飲み込まれてしまうのでしょうか。私たちの世界はもうきらきらと輝くことはないのでしょうか。そんな不安が私たちの頭をよぎりました。

Panic Americana』として、私たちにできることはなんだろう。それは闇と光に目を凝らし、あがき、何かを想い、言葉を紡ぐことでなのではないか。私たちが紡いだ言葉たちが、少しでも誰かの闇に光を灯すことができたら。そんな想いからこのテーマが生まれました。そしてこの「Glittering」という言葉は、制作過程の中で私たちの手を離れて幾人もの感性に触れ、私たちが予想もしていなかったような意味を帯び、さまざまな形に変容していきました。しかしそのどれもが「Glittering」であり、それぞれの「Glittering」に熱い想いが込められています。ぜひ、みなさまにとっての「Glittering」を見つけてください。

昨年を超えたいという想いで、力んで力んで産み、愛を込めて育て上げた我が子です。至らないところがあるかもしれませんが、かわいがって頂けたら私たちにとってなによりの喜びです。

Panic Americana vol. 21 副編集長 佐藤水梨(『Panic Americana vol. 21』「はじめに」より)



CONTENTS
  • 巻頭小説 柔らかい針 はるいち
  • 特集 HIP HOPの時代なんだぜ
  • 1) KISS ON TATTOO 韻踏み夫
  • 2) 絢爛と荒廃のニューヨーク 大和田俊之
  • 3) 誌上講義 The Message of “Love Myself” from The Butterfly 池谷有紗
  • 地味な私にも、実はきらきらがありました。 小谷真理
  • たつこた鼎談 そこにあったものたち ゲスト:茅野裕城
  • 不夜城に還る 巽孝之
  • インタビュー 剥き出しの生をフィルムに 宮本隆司
  • 掻き消されない歌声があるなら 湯田桂一朗
  • 光が灯る場所 佐藤水梨
  • されどわれらは火と遊ぶ 三浦正信
  • インタビュー 夢枕さんのはなし 夢枕貘
  • 編集者こそわが人生 元木昌彦
  • Cafe Panic Americana 30,0000ヒット記念
  • 韓国人留学生の私からみた日本のディズニー愛 ユン・アルム
  • 留学体験記 Sleepless in Seattle 足立英里華
  • 合宿群像記・花束をロビンに

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