『ヴァーチャル・ライト』は、ウィリアム・ギブスンのデビュー長篇『ニューロマンサー』をはじめとする「電脳空間三部作」につづく「橋三部作」の第一作。「プロットのほうは、単純明快な聖杯探究ハードボイルド。その中心をなす「聖杯」こそは、情報配達人ブリックスがサンフランシスコへ携えてくるヴァーチャル・ライト(VL)・サングラスである」(巽孝之、1998年度版解説より)。このヴァーチャル・ライトをめぐる争奪戦に、「橋」の住人で合同バイク便で働く少女シェベット・ワシントンと、元警官で<強力警備保障社>警備員のベリー・ライデルを中心に多くの人間が巻き込まれていきます。しかし、本書の魅力はプロットだけではありません。「マニアックな合成語・造語、ロイマチスのように腫れ上がった観察描写、いきなりトップにギアを入れる会話、網膜を何重にも折り畳むようなイメージ……スタイル、文体」(藤沢周、巽先生の1998年版解説より)——読むことそれ自体が蠱惑的な身体経験となるのです。
巽先生による2026年度版解説は、本書刊行から 33年経過したことをふまえ、1990年代当時にはリアルタイムで捉えきれなかったコンテクスト——ギブスンの現代アメリカ文学史への位置付け、1991年のサイバーパンク終結宣言、レーガン&ブッシュ大統領時代との共振など——を 2026年現在の視点から照射するとともに、本書の主要な舞台の一つとしてサンフランシスコが選ばれたことの意義を読み解きます。未読の方も、すでに読まれた方も、この機会にぜひご一読ください!
『ヴァーチャル・ライト』(新版)
ウィリアム・ギブスン、訳:浅倉久志
文庫、544頁
早川書房
2026年 4月 8日刊行
2,420円(税込)
ISBN: 9784150125172
【目次】
1.巨人たちの夜光肉
2.ガンヘッドの巡回
3.すてきじゃないパーティ
4.再就職のチャンス
5.問題あり
6.橋
7.おまえもしっかりやれ
8.二日酔い
9.交渉が決裂したとき
10.モダンダンス
11.配達
12.眼球運動
13.むしゃくしゃ
14.ラブレス
15.1015号室
16.サンフラワー
17.<トラップ>
18.コンデンサー
19.スーパーボール
20.大きなからっぽ
21.<認知的反体制派>
22.ラバダブ
23.もののはずみ
24.中央橋脚の歌
25.櫂もなしに
26.<彩色人種>
27.嵐のあと
28.RV
29.死んだショッピング・モール
30.霊魂の謝肉祭
31.運転席の側
32.ファロンヴィル
33.ノートブック
34.パラダイスからの脱出
35.<欲望共和国>
36.ノートブック(2)
37.センチュリー・シティ
38.ミラクル・マイル
39.灰色の日の祝祭
謝辞
訳者あとがき
解説/巽孝之(1998年)
解説「世界でたったひとつの都市」/巽孝之(2026年)
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