2000/02/21

Book Reviews『2001年宇宙の旅』講義

巽先生による「『2001年宇宙の旅』講義」が発売 2ヶ月を前にして 4刷を数え、大好評を博しています。各紙に掲載された書評をピックアップしてお届けします。


巽孝之『「2001年宇宙の旅」講義 (平凡社新書)』
平凡社、2001年

...米国のスターウォーズ計画やコンピュータ・ウィルスなど、SF的な意識や視線が、我々の現実を取り巻いている。そういう現在から、あの「2001年」を振り返る愉悦と眩暈が詰まった書である。 
清水良典(朝日新聞 2001年6月17日)

...監督キューブリックが秘めた意味を読み解くには30年かかった。だからこの本はおもしろい。謎の事件の完全な解明、解決編なのだ。
著者の姿勢は独創的というより編集的である。あの映画を巡る多くの言説を博捜し、網羅し、その中からメインストリームと思われるものを選んで簡潔に伝える。...ここには鋭利な刃物の快感がある。 
池澤夏樹(週間文春2001年6月21日号)

...SF界は、記念すべき2001年にSFブームをふたたびとばかりに盛り上がりをみせている。巽孝之の「『2001年宇宙の旅』講義」は、そんな意気軒昂たるSF界の今を伝える、小著ながらも大著のエッセンスを有する優れた評論だ。 
風間賢二(信濃毎日新聞 2001年7月1日)

...巽孝之『「2001年宇宙の旅」講義』は、ついに現実に2001年を迎えた今、68年に公開されたキューブリック監督による傑作映画『2001年宇宙の旅』とクラークの手になる原作小説とを徹底的に比較考察し、新たな視点から読み解いた決定版『2001年』読本である。 
渡辺英樹(週間読書人 2001年7月6日) 

伝説の映画をめぐる小説以上にスリリングでダイナミックな名評論
長山靖生(朝日新聞 2001年7月9日夕刊)

...これは確かにマニアックな本である。読者を選ぶ本である。だからこそ「普通の読書」では味わえない至福と法悦を体験させてくれる本なのである。 
山崎浩一(DIME vol.379 2001/7/19)

...電脳文化によって変容したモノリスは、クラーク作品や続編の映画「2010年」を根本的に改変させながら、今後もメディアとともに変ぼうし続けるだろう。このあたりのテクノロジーとレトリックの綱引きの分析は著者の独壇場だと言えるだろう。後半の小松左京、田中光二、夢枕獏らを取り上げた日本人作家による2001年受容史も興味深い。わたしたちはようやく「2001年宇宙の旅」という傑作のとびらを開いたばかりなのかもしれない。そんなことを考えさせてくれるSF論の力作である。
新戸雅章(共同通信配信 2001年7月)

...本書が成功しているのは「『2001年』がどのような未来予測をしていたかではなく、『2001年』という映像がいかにしてわたしたちの現実を変えたのか」という卓越した視点に貫かれているからである。...深い愛着に裏打ちされた著者の鋭利な分析は実に見事である。 
黒崎政男(『読売新聞』2001年7月15日)

...本書をガイドとするにせよしないにせよ、あるいは僕たちの心の奥に刷り込まれた“モノリスの幻影”を病とみなすにせよしないにせよ、僕たちは自身の2001年を旅するべきなのであり、本書はその出発点なのだ。 
菊地誠(週間読書人2001年7月20日)

「2001年宇宙の旅」というSFと現実を往還する巽孝之の傑作評論
石堂藍(SFM 2001年8月号 vol.42 no.8)

1968年に公開された、アーサー・C・クラーク原作、スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」。映画史上の「ベスト」にあげられることも多いこの作品を、現代SFの第一人者が読み解いた。...宇宙から精神内部へ、さらに電脳空間へと「フロンティア」が移行していった歴史の検証に、視覚の変動をからませた分析は示唆に富む。 
無記名(日本経済新聞 2001年6月17日)

2001/08/29 UP!
本当の2001年を迎えて、何を思い出すかといえば、やはりキューブリックとクラークの『2001年』になる。本書では、その映画『2001年』の意味だけではなく、(むしろ)同作品に感化されて以降の日本SF界、社会全般に対するインパクトを論じている。・・・かくして、映画『2001年』は、20世紀後半のSF世界すべてに、目に見えた(意味ある)影響を与えるキーとなったわけである。 
岡本俊弥(岡本家全記録 Online

「『2001年宇宙の旅』講義」(巽孝之著・平凡社新書)が面白い。特にキューブリック映画のモノリスの謎を視覚的に分析している第5章は素晴らしい。・・・単なるSF作品の講義に終わらず「視覚革命」とも言うべきあらたな領域にふみいっている点が興味深く触発される。 
黒須克浩(CYBERCROSS Online 2001/6/17)

・・・「2ちゃんねる」から大江健三郎までを視野におさめつつ、「モノリス」という「メディア」が今日の視点でどう捉えられ得るのかを内外SF作品の文化史的な分析で明らかにしながら、著者は現代の我々の「視点」そのものを切ってみせているのだ。(評価:比較的コアなSFファンでなければ理解しにくい部分がある(解説はきちんとなされる)ものの、今日『2001年宇宙の旅』を見直すべき意義を十全に示している) 
小池隆太(La Chambre koike Online 2001/5/29)

『日本SF論争史』で40年近く論争を快刀乱麻の筆さばきで整理してみせた巽氏が、こんどモノリスの謎に挑んだ。これは、数ある巽氏の著作でも最も刺激的なものである。(中略)1章、2章の論考がすばらしく、印象だけで述べるが、モノリスの変貌を通して、この30年間のSFの変貌が概観できる……具体的には、ぼくには数作品の印象でしかとらえられなかった「サイバーパンク」がはじめて概観できた感じだ。つまり、混沌としたサイバーパンクの世界をモノリスがすーーーーーーーっと周囲を照らしながら通過していったという印象である。
堀晃(堀晃のSF-Home Page Online 2001/7/25)

・・・欧米SFが、常に(往々にしてそれは異人種だったりする訳だけれど)異なるものからの侵略に立ち向い、それを排除することを主眼に置いたものが主流であったのに対し、日本SFが、その出自が敗戦→戦後民主主義の台頭の流れの中で、ファシズムとそれが引き起こす戦争という物への強烈なトラウマに支配され、欧米SFとは全く違うレールに乗って発達してきた、とする巽氏の分析は鋭いし、腑に落ちるところが多い。 
乱土労馬(Sぱらインターネット分室 Online 2001/6/4)

2001/09/13 UP!
・・・『2001年』のヴィジョンがいかに我々の現実を変えたか、という思索の旅は、それ自体ハードSFのような、インスピレーションに満ちた画期的論考を生んだ。 
無記名(マリ・クレール 2001年10月号 (#29 Vol.3, No.10))

・・・まさに“講義”としてじっくり考えながら読み進めたい一冊である。 
無記名(キネマ旬報2001年9月上旬特別号 (No.1339))

 「『2001年宇宙の旅』講義」書評集