本書は、それぞれ日本滞在経験があり日本に関する影響力ある著作を残したギリシャ生まれのラフカディオ・ハーンとフランス生まれのピエール・ロティを取り上げます。第一部「イメージ」においては、それぞれが捉えた「日本」の相矛盾するものを包含する「イメージ」を詳細な具体例とともに詳述し(第一章「ロティの日本に対する視線とは」、第二章「ラフカディオ・ハーンの日本観」、第三章「日本のイメージ」)、第二部「イメージの創造的発想の源」においては、こうした「イメージ」がこの二人個人とその社会が必要とするものによって作られていたことを明らかにするとともに(第四章「西洋——ロティとハーンのいかなる側面が日本のイメージを決定づけるのか?」)、そうした「イメージ」は実際の日本の社会と精神構造の集合体によっても構築されていた可能性を明治期の日本社会を分析することで検証していきます(第五章「日本——何がこの国家の見解を決めたのか?」)。歴史上連綿と蓄積されてきたアジア表象にロティとハーンの日本表象を位置付けるとともに、その「イメージの創造的発想の源」にも深く切り込みます。「日本」とはどのように観察され、認識され、表現されてきたのか、その背後にはどのような個人の思惑や情念そして社会状況とがあるのかを究明します。
本書末尾に収録された牧野理英先生による訳者解題「「不可解なる」日本人——オリエンタリズムを先どる日本文化論——小野節子博論翻訳にあたって」では、本書の著者小野節子氏のバックグランドや本書が博論として1972年に刊行されたことの学術的意義を詳細に教えてくださいます。
『ラフカディオ・ハーンとピエール・ロティの見た「日本」』
小野節子著、牧野理英訳、田ノ口誠悟訳(フランス語訳担当)
A5判並製、304ページ
小鳥遊書房
2025年9月30日
定価:本体3,800円+税
ISBN: 978-4-86780-087-4
【目次】
序論 日本のイメージ
第一部 イメージ
第一章 ロティの日本に対する視線とは?
第二章 ラフカディオ・ハーンの日本観
第三章 日本のイメージ
第二部 イメージの創造的発想の源
第四章 西洋—ロティとハーンのいかなる側面が日本のイメージを決定づけるのか?
第五章 日本:何がこの国家の見解を決めたのか?
終章
訳者改題
「不可解なる」日本人:オリエンタリズムを先どる日本文化論——小野節子博論翻訳にあたって(牧野理英)
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