メールインタビュー「ぼくたちが人間であり続けるために」では、まずはじめにギブスン氏がどのような経緯でサイバーパンク作家たちのコミュニティと関わるようになり、どんな経緯でどのように SF観を共有するようになったのか、初期作品のころを中心に振り返ります。また、AIが広がる現代においてどのように執筆しているのか、日本内外におけるお気に入りの作品は何か、サイバーパンク作品の映像化、アフリカ系アメリカ人の文化の影響、現在の歴史認識について、そして最後に日本の読者へのメッセージが語られます。
巽先生による特集評論「ビル・ギブスンと出会ったころ——サイバーパンク四十周年」は、その始まりから約四十年たったいま再評価されているサイバーパンク運動に関して、その再評価の要因を探究します。まずは一九八〇年代前半から先生がコーネル大学に留学した当時の雰囲気を振り返り、サイバーパンクと出会ったときの衝撃と興奮を思い返します。そのうえで、当時の八十年代のアメリカがどのようなものだったのかをあらためて探り、「核の恐怖」および「反人種隔離政策」を見出し、サイバーパンクに胚胎された終末論的意識やアフリカ系アメリカ人の抵抗精神とのオーヴァーラップを指摘します。また、サイバーパンク作家の多くが南部出身であることに注目し、サイバーパンク運動を「ニュー・サザン・ルネッサンス」と呼び、ブルース・シュルマンの『アメリカ 70年代』を参照しながら、サイバーパンク運動が勃興した一九八〇年代が、南部変容史ないしアメリカ合衆国の南部化というパラダイム・シフトと連動していたことを明らかにします。
『SFマガジン』
2025年 8月号
早川書房
刊行日:2025年 6月 25日
定価:1,540円
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